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DX推進に必要な技術8選。具体例と活用時の注意点まであわせて解説

DX推進を成功させるためには、技術に加えてビジネス・サービス設計や組織・プロジェクト管理などのスキルが必須です。しかし、DX推進において「技術」が大きな役割を果たしていることも事実です。さまざまな技術がある中で、どんな技術を取り入れるべきか悩まれている方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、DX推進において重要な技術や最新技術をご紹介します。

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DXとは

経済産業省 が 2018年12月に発表した「DX推進ガイドライン」では、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。

出典:『デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン』経済産業省 2018年

注意したいのは、DXとは業務に最先端のIT技術を取り入れるだけではないという点です。IT技術の導入は単なる手段に過ぎず、最終的な目的は企業やサービスを変革することです。その点はよく注意してDX推進にのぞむようにしましょう。

続いては、DX推進で重要な技術や仕組みについてご紹介します。

DX推進で重要な技術・仕組み

①AI(人工知能)

AI(人工知能)とは、人間の知能をコンピューターが再現したり、人間の知能を超える情報の処理をしたりする技術をさします。このプロセスが人間の意思決定の在り方に近いことから「人工知能」と呼ばれています。ただし、専門家によって解釈が異なるため明確な定義はありません。既に多くのAIが企業のDX推進に活用されており、対応可能な業務は下記になります。

 

・予測・分析

さまざまなデータをAIが読み込んで学習し、特徴を表示します(分析)。さらに新たなデータを読み込ませることで、学習内容を基にAIが予測を実行していきます(予測)。

 

・最適化

AIが業務における多様な目的や制約を考慮しつつ、最良の選択肢を導き、意思決定を行います。棚割最適化、運転計画・スケジュール最適化、資材カット最適化、プロモーション最適化、人材配置最適化などに活用できます。

 

・画像解析

AIと従来の画像解析技術を組み合わせた手法で、分類(または認識)と検出を行います。ディープラーニングによって大量の画像データを読み込んで学習すれば、従来の機械学習に比べて特徴量(分析すべきデータや対象物の特徴・特性を、定量的に表した数値)の獲得がより簡単になります。店舗・工場内人物検知、顔認識・表情解析、2次元・3次元ポーズ推定、乱流検出、物体異常検知などに活用できます。

 

・音声解析

人間の話し声を解析し文字に変換する音声解析を、AIを取り入れて行います。ディープラーニングにより認識精度が飛躍的に伸びたことで、スマートフォンに搭載されている音声アシスタント機能やスマートスピーカーなどが実現しました。その他にも音声の文書化や介護などの業界固有名詞認識などが可能になっています。

 

・文章解析

AIによって文章(テキストデータ)を解析し、どこから取得された情報か、何に関する記述がされているのか、どんなグループ分け・ラベリングができるかなどを把握します。文章分類・クラスタリング、文章要約、業界固有名詞認識、ラベリング文収集、アノテーション補助などに対応します。

 

・ロボティクス

ロボティクスとはロボットの設計や制作、制御を行う「ロボット工学」を指す言葉です。AIがロボティクスと連動することで、インターネットにつながったセンサーから多様なデータを収集し、AIで処理して動作につなげます。汎用物体把持、液体・粉体秤量などに活用できます。

以上の技術を駆使し、企業のDXを推進する例が増えています。例えば、物流業界においては配達先と倉庫、配達トラックの位置情報などをAIが解析し、最適化することで迅速な荷物のお届けを可能とする事例があります。

②Generative AI(生成系AI)

Generative AI(生成系AI)は、AIが自ら新しい情報やコンテンツを生成することができる技術です。音楽や画像、文章、動画など、さまざまな種類のコンテンツの生成に利用されています。

2022年にOpenAI社が開発した対話型AIチャットサービス「ChatGPT」は様々な文章を入力すると的確な回答をしてくれるということで大きい反響を呼びました。「ChatGPT」は文章だけではなく、簡単なゲームのJavaScriptのコードを書いてくれたり、Excelの関数を教えてくれたり、文章を翻訳・要約してくれたり、SEO(検索エンジン最適化)ツールとして活用されたり、広告文を作成してくれたりと様々な活用が広がっています。しかし、違和感のある回答や間違ったことも出力されるため、使う側のリテラシーも重要です。

他にもStable Diffusionなどの画像生成AIサービスで高品質なイラストや画像も生成できるようになりました。最近では人間の写真と見間違うほどの高性能な人の画像も生成できるようになり、ビジネスで使う写真をわざわざ写真撮影しなくてもすむ日が来るかもしれません。

動画生成AIも進化を遂げています。NetflixがYouTubeで公開した3分の短編アニメの背景美術はAIによってその多くが作られました。

このプロジェクトはアニメ業界の人手不足を解消するための施策としてスタートしており、シーンによっては9割手間が削減できたところもあったそうです。

参考:『Netflixが「画像生成AIでアニメ制作」してわかったAIの限界…『犬と少年』で挑戦したもの』2023年2月8日

以上のように、AIの中でも生成系AIは直近急激にDX推進のために活用が広がっている技術の一つです。

③ロボット

生産現場や物流業務など、多くの業務においてロボットが活用されています。 ロボット技術が企業のDX推進において活用されている具体例として以下のようなものがあります。

 

・生産ラインでの自動化

自動車工場や電子機器工場などの生産現場では、ロボットによる自動化が進んでいます。 例えば、自動車工場では、溶接や塗装などの作業を自動化するために多数のロボットが活用されています。これによって、生産ラインの効率化や品質の向上が実現され、企業のDX推進につながっています。

 

・物流業務の自動化

物流業界でも、ロボットが活用されています。例えば、自律走行ロボットによる倉庫内でのピッキング作業や、商品の搬送、棚卸し作業の自動化などに活用されています。

自動化によって作業ミスの軽減や品質の向上も期待されています。

 

・医療・介護分野での活用

医療分野では、Intuitive Surgical社のダビンチ ・システムなどに代表される手術用ロボットとしての活用が進んでいます。術中に医師が操作することで、より高精度な手術を実現することができます。

また、医療スタッフが感染症の危険を回避しながら患者の治療や診察を行うことができるようになる自律移動型ロボットの実証実験も進んでいます。ロボットによる血圧測定や、患者への薬剤投与などが試みられています。

介護分野では 高齢者や障がい者の生活を支援するための介護用ロボットの活用が進んでいます。ベッドからの移動支援や、入浴支援など、高齢者の日常生活動作の補助を行うことで、介護スタッフの負担を軽減することができます。

また、近年のロボットは裏ではAIの技術が使われていることが増えています。AIの画像解析技術で対象を補足し、AI自律制御で対象物を掴めるようにロボットのアームが動くといった具合です。

企業のDX推進にロボットを活用したい場合はAIを用いたロボットも検討してみましょう。

④クラウド

総務省が発行した「平成30年版 情報通信白書」によると、クラウドとは「クラウドコンピューティング(Cloud Computing)」を略した呼び方で、「データやアプリケーションなどのコンピュータ資源をネットワーク経由で利用する仕組み」と定義されています。

クラウドへの移行は、DX推進を妨げるレガシーシステム(過去の技術や仕組みにより構築されているシステム)からの脱却に向け、ますます進んでいます。

クラウドを活用すると、「SaaS(Software as a Service)」による電子メール、グループウェア、顧客管理、財務会計などのソフトウェア機能の提供や、「PaaS(Platform as a Service)」による仮想化されたアプリケーションサーバやデータベースなどアプリケーション実行用のプラットフォーム機能の提供、「IaaS(Infrastructure as a Service)」によるデスクトップ仮想化や共有ディスクなど、ハードウェアやインフラ機能の提供などが可能になり、企業のDX推進にも大きく影響します。

具体的には、自社サーバで一からAIモデルを構築するのが大変な場合、クラウド上で共有されているAIモデルを利用することで効率よく低コストでAIを活用できるといった活用事例があります。

このようにクラウドを活用することで企業のDXが低コストで効率よく実現される可能性があります。

⑤VR/AR

VRとは「Virtual Reality」の略で「仮想現実」を意味します。実現・再現が難しいイベントや体験に活用され、スマートフォンを使った手軽なサービスから、360度視界を覆うヘッドマウントディスプレイを装着して没入感のある仮想世界に入るサービスまでさまざまです。

ARは「Augmented Reality」の略で「拡張現実」という意味で、スマートフォンなどを使って、現実の映像の手前にコンピュータ画像を表示します。ゲームや娯楽などのサービスに利用されています。

VR/ARによって、わざわざ現地に赴く必要がなくなったり、実際の製品が無くても実際に目の前にあるように扱ったりすることができるため、そうした特性を活かして企業のDXにも活用が広がっています。

具体的には建設現場においてプロフェッショナルによる作業が必要な場合、遠くにいるプロフェッショナルがその場にいるかのように作業をすることが出来たり、危険な場所での作業を遠くから実施することができるため従業員の安全を守ったりといった活用のされ方があります。

⑥5G

5Gは第5世代移動通信システムのことで、従来の4Gより高速で大容量かつ低遅延で通信が可能な次世代の無線通信技術です。ビジネスにおいてもイノベーションが期待されています。

その理由として、以下のような5Gの特徴が挙げられます。

 

・高速通信が可能

従来の4Gに比べて通信速度が約20倍速いと言われているため、高速なデータのやり取りが可能になります。

 

・低遅延性能が期待できる

リアルタイムなデータのやり取りが可能になるため、遠隔地からの操作や監視、ロボット制御などの分野での利用が期待されます。

 

・大容量通信が可能

4K画質や3D映像など大容量のデータ通信の必要性が増してきた昨今、大容量データの通信手段として活用が期待されます。

 

・通信の安定性が高い

大量のデバイスが接続されても安定した通信が可能になり、センサーデバイスの活用や自動運転など、安定した通信環境が求められる分野での利用が期待されます。

5Gはビジネスでの活用も既に始まっており、搬送ロボットの自動運転制御やVRやARを活用した遠隔通信のサービスの開発にも活用されるなど企業のDXにも大きく貢献しています。

具体的には、大成建設を始めとする8社がKDDIの5G技術を使って自動運転移動サービスの実証実験を西新宿で開始した事例があります。無人自動運転による移動サービスの早期事業化を目的とし実施されており、自動運転サービスの事業化はまさにビジネスモデルを変えるレベルの変革、DXに繋がります。

参考:『都内初、西新宿でまちのインフラと協調した自動運転移動サービスの実証実験を実施』KDDI株式会社 2021年12月15日

 

⑦ブロックチェーン

ブロックチェーンとは、取引や情報をブロック単位でつなぎ合わせ、分散型のデータベースに処理・記録する技術です。そのデータベースは分散型の台帳として機能し、ネットワークに参加するユーザー全員が共有しているため透明性も高く改ざんも難しいとされています。

ブロックチェーンは以下のような仕組みを支える技術となっています。

 

・仮想通貨

ビットコインなどに代表されるインターネットを通じて電子データでやり取りされる通貨のこと。

 

・NFT(Non-Fungible Token)

代替不可能なトークンの略。他と代替が不可能な固有の価値がついたデジタルデータのこと。デジタルで作られた絵に数億円の価値がつくなど2021年以降バブル的な盛り上がりを見せています。

 

・DAO(Decentralized Autonomous Organization)

日本語では「分散型自律組織」と訳されます。ブロックチェーン技術を用いて世界中の人々が協力して管理・運営する組織のこと。中央管理者がいない、透明性が高く運営体制など誰でも閲覧可能、誰でも参加可能(入るのに試験や面接が不要)のため新しい組織の在り方として注目されています。

 

・DeFi(Decentralized Finance)

日本語では「分散型金融」と訳されます。中央管理者がおらずユーザー同士で取引や管理を行うため時間がかからず手数料も削減できるとされています。ただし、DeFiには運営上の脆弱性などのリスクもあるとして国際金融監督機関である金融安定理事会(FSB)はDeFiの規制を検討すると発表しました。

ブロックチェーンがDXに活用されている事例として、IBMが取り組んでいるブロックチェーン技術を活用したサプライチェーン管理システム開発があります。ブロックチェーンを利用することで、サプライチェーン上での商品の流れや品質情報、支払いのやりとりなどを透明化し、業務プロセスを最適化することができます。

⑧3DCG

3DCGとは、3次元グラフィックスの略称であり、コンピュータ上で作成された3次元の画像や動画のことを指します。3DCGは、映画やテレビ番組、ゲームなどの映像制作だけでなく、製品デザインや建築分野でも使用されています。3DCG技術自体は1980年代からありましたが近年の技術の進歩により、現実を撮影した動画と遜色ないレベルのリアルな3DCGも増えてきています。

3DCGが企業のDXに与える影響や活用事例として、以下のようなものがあります。

 

製品デザインの高度化

従来はリアルな物体の製品を作る際、模型を作る必要がありましたが、3DCGを使うことでデザインの段階での修正や変更が容易になり、より正確で詳細なデザインが可能になります。

 

広告クリエイティブとしての活用

3DCGを活用した広告の活用も広がっています。3DCG技術を使うことでよりインパクトと没入感のある広告を作って人の目につく広告を作成できます。また、わざわざ写真や動画を撮らなくてもCG技術で作れるためコスト削減も考えられます。

最新の3DCG動画として海外のクリエイターが3DCG技術を駆使して再現した日本の街並みの動画をご紹介します。

非常にリアルで現実の動画と言われても信じる人もいるのではないでしょうか。このようにリアルな3DCG技術が普及すれば撮影困難な場所の映像や、現実にはない風景の映像なども作成でき企業のDXにも貢献することでしょう。

技術によって実現されること

①デジタルツイン

デジタルツインは、物理空間に存在する物体や環境を、仮想空間上に再現したテクノロジーのことです。現実の対象物をスキャンし、その形状や動きをデジタル化することで、仮想空間上での検証や予測が可能になります。

物体や環境の形状を、高精度で取得する3Dスキャニング技術や、センサー、AIによる予測・最適化技術などが活用されています。

デジタルツインを使用することで

  • 製品の設計や生産プロセスの最適化
  • 実際の生産ラインにおけるトラブルの事前予測
  • 保守管理の効率化

などが可能になり、企業のDX推進に貢献します。

②メタバース

メタバースとはインターネット上の仮想空間のことで、コンピュータ上で作られた3D空間によって構成されています。自分のアバターを操作し他の人々との交流や活動を行うことができます。現実世界と似たことをできるようにするために様々な技術が使われています。

メタバースで絵や音楽などを販売する場合、デジタルデータなので複製される恐れがあります。しかしブロックチェーン技術を用いたNFTを使うことでコピー品ではないオリジナルの商品を販売できます。

また、メタバースへの没入感を高めるためにVR技術を使う例も多いです。VRゴーグル越しでメタバース空間に入ると実際にそこにいるかのような体験をすることができます。VR技術や3DCG技術を使うメタバースではデータの通信量も非常に膨大になります。こうした課題も5Gを使えば今まで以上にメタバース空間へのアクセスが安定します。

また、メタバースの世界をよりリアルに近づけるためには現実動画のような最新の3DCG技術の活用も考えられます。しかし、複数人が同時に介在しリアルタイム処理が求められるメタバース空間で扱うのは難しい状況です。今後スペックの向上や技術の向上により非常にリアルなメタバース空間もできるかもしれません。

このように多くの技術を用いて実現されているメタバースですが、続々と企業が参入しており、DXを実現する手段の一つとして活用が検討されています。

最新技術を活用してDXを推進している事例

最新の技術を活用して企業のDXを推進している事例をいくつかご紹介します。

【AIの事例】ロイヤルホールディングス

ロイヤルホスト・天丼てんや等の外食事業を展開するロイヤルホールディングスは、AI技術を用いた飲食業における新たな顧客価値創造に向けエクサウィザーズと協業を開始しました。

 

実施内容

天ぷらにおける衣の形状や適切な揚げタイミングの判定等を可能にする調理AIを開発します。具体的には、必要となるデータ・プロセスを設計し、分析を行う上で必要となるセンサーや取得すべきデータ形式などを定義し、データ収集基盤を構築します。次に、温度や音声、動画像などのデータを元に多数のアルゴリズムを用いて、美味しく、見た目も良い天ぷら調理を行う調理AIの開発を目指します。

 

参考にしたいポイント・アクション

  • 味や見た目(てんぷらの衣の形状)といった従来のAIでは実現が難しく前例も少ないことにAIを活用しようとチャレンジしている点は参考にしたいポイントです。
  • 映像のデータだけではなく、温度、てんぷらを揚げている音など、複数のデータタイプを組み合わせて複数のアルゴリズムを用いて精度の高い調理AIを作成しています。

参考:『エクサウィザーズとロイヤルホールディングス、AI技術を用いた飲食業における新たな顧客体験創造に向け協業』2023年2月8日

【ロボットの事例】JAXA

国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)による一般競争入札「2022年度機械学習を活用したロボット操作の自律化検討・試作等」において、エクサウィザーズの模倣学習・予想学習技術が採用されました。

 

実施内容

国際宇宙ステーションの物品の運搬作業は、画像解析やセンサーを用いた複雑なAIと、ソフトバッグにおけるファスナの開閉などの不定形作業に対応できる高度な模倣学習・予想学習技術を活用したAIロボットが必要なため自動化が困難でした。

そこでエクサウィザーズの「exaBase ロボティクス」を活用して物資輸送用バッグの操作のデモンストレーションを行います。これにより、有人宇宙拠点への適用を想定したロボットによる操作作業の自律化検討を行います。

 

参考にしたいポイント・アクション

ロボットは柔らかく小さいものを掴むといった細かい作業が苦手ですが、マルチモーダルAIを活用して解決しようとしている点とは参考にしたいポイントです。

参考:『エクサウィザーズの模倣学習・予想学習技術がJAXAにおける有人宇宙拠点内クルー作業の自動化・自律化に向けた 技術検討の対象に採用』2023年1月16日

【デジタルツインの事例】鹿島建設

鹿島建設は落合陽一氏がCEOを務めるピクシーダストテクノロジーズと共同で「鹿島ミラードコンストラクション」と呼ばれるデジタルツイン基盤を構築しました。

 

実施内容

「鹿島ミラードコンストラクション」は着工前に作成するBIM(コンピュータ上に現実と同じ建物の立体モデルを構築する技術)と施工中の建設現場に設置したセンサー・デバイスから取得する空間データを、一元管理するクラウド上のデータベースです。これにより現実の構造物を、3DCG技術を用いた仮想空間に再現可能となります。

これにより施工の進捗状況を部材単位で数値化・可視化できるようになり、常に変化する建設現場を施工管理、遠隔管理、自動搬送ロボットに活用できるようになりました。

また、鹿島建設はマルティスープと共同で、建築現場のデジタルツインである「3D K-Field」を開発しています。現場に設置された多くのIoTセンサーで取得したヒトや設備・機材などのデータを仮想空間に表示することが可能で、これにより使わなくなった機材の特定によりコスト削減をしたり、バイタル情報を取得して作業者の健康状況をリアルタイムに把握したり、空間の構造を変えるとどのような変化が起きるかをシミュレーションしたりすることも可能になりました。

 

参考にしたいポイント・アクション

  • 設備や製品の可視化だけでなく従業員の健康情報までも可視化してシミュレーションに加えているため、シミュレーション上の精度を上げるために参考にしたいポイントです。

参考:『デジタルツイン基盤「鹿島ミラードコンストラクション」を構築』2021年1月21日

参考:『建設業界が劇的に変わる? 鹿島・清水・国交省が挑むデジタルツイン化の“新時代”』ビジネス+IT 2022年10月13日

新技術を導入・活用する際に気を付けるポイント

今まで紹介してきた最新技術を活用する際に気をつけるべきポイントがいくつかありますのでご紹介します。

①サイバーセキュリティ

サイバーセキュリティとは、デジタル化された情報の漏えいや改ざんを防ぐ方法・手段のことです。例えば、クラウドの導入はすぐに始められて運用負荷が軽く、柔軟なカスタマイズも可能と、DX推進に欠かせない技術です。しかし、レガシーシステムに比べデータの外部漏えいやアカウントの不正利用など、サイバーリスクが高まるというデメリットがあります。そのためサイバーセキュリティが重視されています。

DXにおいて重要なセキュリティ対策についてはこちらの「DXで重要なセキュリティ対策とは?最新のセキュリティトレンドも紹介」の記事で詳しく紹介していますので合わせてご覧ください。

②社員のリテラシーの強化

全社員を対象にITリテラシー教育を行うことが必要です。例えば社員に外部の講座を受講させたり、社員研修を行ったりすると良いでしょう。また社員のITリテラシーを強化するには、PC、モバイル、クラウドなどのデジタルデバイスや技術にアクセスしやすい設備・環境の整備も欠かせません。

③技術の利用が目的にならないようにする

新技術を使いこなすことは重要ですが、使えるようになった時点で満足してしまっては意味がありません。新技術はあくまでも手段であり、重要なのはそれらを用いた新たなサービスの創出やビジネスの変革を行い、DXを推進することだと忘れないようにしましょう。

④技術を使う現場の意見をよく聞く

導入する技術を決めるのは経営層や管理部門であっても、実際に使うのは現場の社員です。両者が本当に納得できる技術でなければ、最新の技術を導入しても意味がありません。現場の意見をよく聞くとともに、経営層・管理部門側も必要なことはしっかり伝える必要があります。その上でお互いに思考や行動様式を変革させ、DXを推進することが求められます。

まとめ

DX推進にはデジタル技術の活用が必要不可欠です。どういった技術があり、どのような先行事例があるかを把握しておくことは、DXを推進していくうえで非常に重要なため、少なくとも本記事で紹介した技術についてはしっかりと理解しておきましょう。また、今後も日頃情報収集をして、どんな技術が生まれ、企業での活用が進んでいるのか、常にキャッチアップするように心がけましょう。

本記事を読んでDXに必要な技術がおおよそ理解できたという方は、次は実際に自社の課題を解決する技術が何かを考え、具体的な活用方法を検討してみてはいかがでしょうか。

また、デジタル技術を活用してDXを推進するためには活用する人のリテラシー向上が欠かせません。新しい技術を扱える人材、新しい技術にすぐキャッチアップできる人材の確保や、新しい技術を活用していく文化を会社として醸成することにも意識して取り組みましょう。

そうすることで新しい技術を活用してDXを推進していくことができるようになるでしょう。