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米政権、フロンティアAI評価の枠組みを非公開へ オープンモデルは対象外に

米政権、フロンティアAI評価の枠組みを非公開へ オープンモデルは対象外に

米ホワイトハウスが、先端AIモデルを評価するための新しい枠組みを一般公開しない方針を固めた。米ニュースサイトAxiosが8月4日、協議に詳しい3人の関係者の話として報じた。内容が伝えられるのは手続きに参加している企業だけで、それ以外の企業、政策担当者、研究者、そして同盟国は、米政府が主要AI政策をどう運用するのかを推測するしかない立場に置かれる。

枠組みの根拠は、6月2日にTrump大統領が署名した大統領令14409号である。同令は署名から60日以内に、AIモデルの高度なサイバー能力を評価する機密のベンチマーク手続きを整備し、どの水準を超えたモデルを「対象フロンティアモデル」と指定するかの閾値を定めるよう関係省庁に指示した。指定の判断はNSA(国家安全保障局)長官が行う。

その上で同大統領令は、開発企業が自発的に参加する枠組みの設計を求めた。企業は開発中のモデルが指定に該当するかを政府に照会でき、該当する場合は他の「信頼できるパートナー」に提供する最大30日前に政府へアクセスを認める。誰をパートナーに選ぶかは政府と企業が共同で決める。一方で同大統領令は、新モデルの開発や公開に対する政府の許認可制や事前審査の義務化を認めるものではないと明記した。

「機密でないからといって、触れ回るつもりはない」

ホワイトハウス当局者は8月3日、期限内に枠組みを完成させたとAxiosに認めた。ただし内容も、誰が閲覧したかも、企業がいつから使い始めるのかも明かさなかった。当局者によると、草案にはAnthropic、OpenAI、Googleの3社がフィードバックを寄せており、政権はこの3社より「はるかに多くの」業界パートナーと協議しているという。

大統領令が機密指定したのはベンチマーク手続きと該当閾値であり、任意枠組み自体を機密扱いとする規定はない。それでも公開しない理由について、当局者は「機密でないからといって、全員に触れ回るつもりはない」と述べた。

対象はクローズドモデルのみ

8月4日にホワイトハウスで開かれた実務者会合の説明を受けた複数の関係者によれば、枠組みは「対象フロンティアモデル」を、クローズドソースで最先端の能力を持ち、国家安全保障上のリスクを伴うモデルと定義している。ただし何をもって最先端とするか、何が国家安全保障上のリスクにあたるかの明確な線引きは示されていないとAxiosは伝えている

注目されるのは、オープンモデルが対象から外れた点だ。枠組みには、この文書のいかなる部分も公開済みオープンモデルを制限するものと解釈してはならない、との文言が入っているという。

公開前30日間の審査についても運用の細部が固まりつつある。モデルは高セキュリティ環境で保管され、政府職員のアクセスは制限されたうえで、誰がアクセスしたかの詳細な記録が残される。審査には単一の官庁ではなく複数の政権幹部が関与する。企業側には、初期段階のモデルではなく公開直前のモデルを提出するよう促されたという。能力が一段劣るシステムしか持たない企業の多くは、そもそも枠組みの対象外になる見通しだ。

会合には半導体大手の米NVIDIAのスタッフも参加していた。オープンソース推進の立場で知られる同社CEOのJensen Huang氏は、先週ワシントンで商務長官のHoward Lutnick氏とTrump大統領と会談している

残る「信頼できるパートナー」の空白

未解決のまま残されたのが、早期アクセスを得る「信頼できるパートナー」に誰が入るのかという問題である。外国政府が対象になり得るのかも判明していない。AxiosはEUと英国に取材したが、EUはコメントを拒否し、英国は複数回の問い合わせに応じなかった。

背景には、大規模なサイバー攻撃の相次ぐ発生と、中国勢のAI開発の急速な進展がある。枠組みの構図を整理すると、米国企業のクローズドモデルは政府の事前審査を通る一方、性能で肉薄する中国製オープンウエートモデルは審査の外側にある。米政府がこの非対称をどう埋めるつもりなのかは、枠組みが非公開である限り、外部からは検証できない。

日本にとっても他人事ではない。先端モデルへの早期アクセスの可否は、防衛やインフラ防護でのAI活用の前提条件になる。その選定基準が米国の同盟国にも明かされない状態が続けば、日本の政策当局は判断材料を持たないまま米国の運用結果を待つことになる。

参照ソース

  • Axios(8/4)非公開方針: https://www.axios.com/2026/08/04/white-house-ai-framework-under-wraps
  • Axios(8/4)枠組みの中身スクープ: https://www.axios.com/2026/08/04/trump-ai-framework-open-models
  • Axios(8/3)期限内完成の発表: https://www.axios.com/2026/08/03/white-house-finalizes-ai-framework-behind-closed-doors
  • 大統領令14409号原文: https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2026/06/promoting-advanced-artificial-intelligence-innovation-and-security/
著者
湯川鶴章

AI新聞 編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『生成AIで心が折れた』(2025年)、『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。