AI管理の主導権巡り対立 トランプ大統領、国連で国際統制を拒否
トランプ米大統領は9月22日、ニューヨークの国連総会で一般討論演説に臨み、国際的なAI規制の動きを「グローバリストの企み」と呼んで断固拒否した。その1時間足らず前には、同じ総会でAntónio Guterres国連事務総長が「キラーロボット」の禁止と、国際的にAIを監視する仕組みづくりを訴えたばかり。両者の溝は、AIのリスクを誰が管理するかにある。
国際統制は拒否、監視は司法省で
ホワイトハウスの発表文によると、トランプ大統領は、国際的な枠組みでAIを縛ろうとする試みを米国は一切認めないと述べた。「グローバリスト」は、国際機関や多国間の取り決めを批判する際にトランプ陣営が好んで使う言葉だ。あわせてAIを「今後は正式に『スーパーインテリジェンス』と呼ぶ」と宣言した。
米FOXビジネスによると、同大統領は「産業革命を上回るほどの技術の成長を妨げるつもりはない」と述べ、超知能を制する者が勝つ、米国は中国を大きく引き離していると強調した。一方で慎重に対応するとし、監視は司法省が担うと語った。
国連と欧州は多国間の監視を要求
対するGuterres事務総長は、政府から一握りの民間企業や個人へ権力が移りつつあると警告し、「危険なのは技術そのものではない。誰も責任を負わない技術だ」と述べた。生死に関わる判断を機械に委ねてはならないとして、「キラーロボットがいる未来にしてはならない」とも強調した。キラーロボットは、人間の判断を介さずに標的を選んで攻撃する自律型兵器の通称だ。
ロイター通信によると、Guterres氏は各国首脳に対し、AI開発が行き過ぎないよう速度を管理する環境づくりと、独立した第三者が監視する国際的なリスク管理の仕組みを求めた。
同じ考えの国は少なくない。AFP通信によると、総会を前に欧州を中心とする20カ国以上の首脳が、高度なAIに法的拘束力のある安全対策を求めた。米国と中国はいずれも賛同しなかった。
米AI企業のトップも国際協調を訴え
翌23日には、米国のAI開発をけん引する2社のトップが国連の場で、トランプ大統領とは真逆ともいえる訴えを行った(米経済誌Fortune)。米ニュースサイトAxiosによると、安全保障理事会のAI会合で、米OpenAIのCEO、Sam Altman氏は、AIの行方を左右する重要な判断をサンフランシスコのAI企業だけに任せてはならず、国民に責任を負う政府が民主的な手続きを通じて関わるべきだと述べた。米AnthropicのCEO、Dario Amodei氏も、AIの危険性を調べる共通の試験基準や、安全保障上の懸念を各国に知らせる通報の仕組みなど、国際的な取り決めを提案した。
中国とは二国間の通報網
もっとも、トランプ政権も他国との協調をすべて退けているわけではない。Scott Bessent財務長官は20日、中国の何立峰副首相との協議で、国家安全保障を脅かすほどのAI事故が起きた際に互いに通報し合う仕組みを提案した。FOXビジネスによると、米中両軍の間にある緊急連絡網と同様の「ホットライン」を想定しているという。Amodei氏が国際的な取り決めとして求めた通報の仕組みを、米国は中国との二国間で整えようとしている。中国側は提案を受け入れるかどうか明らかにしていない(Al Jazeera)。トランプ大統領と習近平国家主席は米国時間24日、ホワイトハウスで首脳会談に臨む。
溝は「誰が管理するか」
トランプ大統領は国連を軸とする多国間の枠組みを拒む一方、国内では司法省による監視を掲げ、中国とは二国間の通報網を探る。Guterres氏や欧州各国、米AI企業のトップは、国際的な枠組みでリスクを管理するよう求める。両者を分けるのは、AIのリスクを誰の手で管理するかだ。24日の米中首脳会談は、米国流の「管理」の中身を占う最初の場となる。