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米Meta、AIエージェント専用のキーホルダー端末「Muse Charm」 元Appleデザイナーが9カ月で形に

米Meta、AIエージェント専用のキーホルダー端末「Muse Charm」 元Appleデザイナーが9カ月で形に

米Metaは9月23日(米国時間)、年次イベント「Meta Connect 2026」の基調講演で、9月8日に公開したばかりのAIエージェント「Muse」専用の小型端末「Muse Charm」を初めて公開した。キーホルダーに付けて持ち歩ける大きさで、角の指紋センサーに触れるだけで話しかけられる。スマホのロックを解除してアプリを開く手間を省くのが売りだ。CEOのMark Zuckerberg氏は12月の年末商戦に間に合わせる考えを示したが、価格には触れなかった。

「AIメガネを持たない人には一番の近道」

Zuckerberg氏がこの端末を取り出したのは、メガネ型端末やVR機器の発表が2時間ほど続いた講演の最後だった。米Appleの新製品発表でおなじみの「最後にもう一つ」の演出だ。「Museでできることを丸ごと、キーホルダーの大きさに詰め込んだ」と胸を張り、「AIメガネをかけていない人がMuseに話しかけ、目の前の様子を見せるには、これが断然速い」と強調した。

米Bloombergによると、画面は約2インチのタッチ式有機ELで、見た目は1990年代にバンダイが売り出した「たまごっち」を思わせる。画面の中央にMuseのキャラクターが現れ、姿や服装、声を好みに変えられる。5Gの通信機能を持ち、Wi-Fiのない外出先でもMuseにつながるが、電話はかけられない。前後に付いたカメラの主な役割は、Museに周囲の映像を見せることだ。初期設定はスマホのMuseアプリで行う。関係者は、身に着ける端末ではなく、一日に何度も手に取って話しかける端末だと説明する。

元Appleのデザイナーが主導、発売を1年前倒し

Charmを手がけたのは、米Appleで操作画面のデザインを統括していたAlan Dye氏が率いる、Metaの新しいデザイン部門だ。Metaは2025年末にDye氏を引き抜き、Dye氏はさらに多くのデザイナーをAppleから呼び寄せた。

当初は遊び心から生まれた試作品にすぎず、発売も2027年を想定していた。これを本格的な製品に格上げし、年内発売に前倒しさせたのはZuckerberg氏だ。今年3月の構想から12月の発売まで9カ月あまり。Apple出身のデザイナーたちにとっても経験したことのない日程だったという。

実際、まだ作り込みの途中にある。Zuckerberg氏によると、これまでに作ったのはごく少数で、外装の素材や部品の配置も決まっていない。講演中の実演では、自分のMuseに、最高技術責任者(CTO)のAndrew Bosworth氏やDye氏のチームとの打ち合わせを予定表に入れさせ、試作用の3Dプリンターが空いているかも確かめさせた。仕上げの段取りそのものを、AIエージェントに任せてみせた格好だ。

幹部自ら「戦略の中核ではない」

ところが、Meta自身は期待を抑えにかかっている。Bosworth氏はCharmを「ちょっと変わっていて楽しい。こんなものはほかにない」と持ち上げる一方、正式な第1世代の手前の「お試し版」と位置づけ、消費者がどう使うのかをまず見たいと話す。

さらに「戦略の中核ではない」とくぎを刺した。Museを使う人の大半はスマホやAIメガネ経由で、専用端末を使う人はずっと少ないとみる。それでもMuseには熱心なファンが大勢いるため、買う人はいるという。価格は未定だが、関係者によるとスマートウォッチ並みになる見通しで、Bosworth氏は販売目標も明かさなかった。

土台のMuseは好調な滑り出し

Charmの行方は、Muse本体の人気にかかっている。Museは、メールの送信や旅行の予約、ネットでの買い物などを利用者に代わってこなすAIエージェントだ。

調査会社の米Apptopiaによると、公開から12日間のダウンロード数は180万件と、ChatGPTのスマホアプリが同じ期間に記録した130万件を上回った(いずれも米国とカナダのiPhone版)。米国での1日あたりの利用者数も約64万人と、当時のChatGPTの3倍近い。

Zuckerberg氏は講演で「我々の構想の中心はMuseだ」と宣言し、稼ぎ方も明かした。Museはかなりの量まで無料で使えるようにし、Museを通じた取引から小さな手数料を取って、いずれ利益を出すという。講演では小売り最大手の米Walmartや家電量販の米Best Buyなどとの提携も発表した。

利用者がMuseに話しかける回数が増えるほど、買い物などの取引も増える。スマホを取り出すより早く話しかけられるCharmは、その回数を増やすための道具だ。

失敗続きのAI専用端末

ただ、AI専用端末は失敗の歴史でもある。AI端末の新興企業、米Humaneが2024年4月に発売した「Ai Pin」は、699ドルに加えて毎月の通信料がかかり、出荷は1万台に届かなかった。同社は米HPに1億1600万ドルで買収され、2025年2月にサービスを止めた。同じく新興の米Rabbitの手のひら端末「R1」は約13万台を売ったが、2024年9月時点で毎日使う人は約5000人にとどまった。どちらも、スマホとは別に持ち歩く手間をかけさせたうえ、反応はスマホより遅かった。

Charmには、この2社になかった強みがある。すでに多くの利用者を抱えるMuseという土台だ。

課題もある。バッテリーの持ちや本体の寸法はまだ公表されていない。Metaのメガネ型端末は、周囲の人を無断で撮影しかねないとして、この1年プライバシー面の批判を浴びてきた。同社は今回、初めてカメラを省いたメガネを投入したが、講演でプライバシーへの懸念にはほとんど触れなかった。前後にカメラを積むCharmにも、同じ懸念がつきまとう。Muse自体が米国とカナダでしか提供されておらず、日本で手にできる時期も見通せない。

期待は控えめ、日程は前倒し

幹部は「戦略の中核ではない」と言い、Zuckerberg氏は発売を1年早めた。一見ちぐはぐだが、Bosworth氏の言う「お試し版」と考えれば筋は通る。Metaが急いで知りたいのは、端末の売れ行きではなく、人々がAIエージェントを日常でどう使うかだ。12月の発売後、その答えが見え始める。