毎週3億人がChatGPTに健康相談 ヘルスケアプラットフォームを狙うOpenAI
米OpenAIが、ChatGPTの巨大な利用者基盤を足場に、ヘルスケアのプラットフォームを狙っている。
OpenAI共同創業者兼PresidentのGreg Brockman氏は9月8日、テック系ポッドキャスト「TBPN」に出演し、「われわれが作ろうとしているのは、世界最高のヘルスケア・プラットフォームだ。医療をAI時代へ移行させたい」と語った。
その背景にあるのが、ChatGPTで健康について質問する人の多さだ。
OpenAIによると、ChatGPTの週間アクティブユーザーは10億人を超え、このうち健康やウェルネスについて質問する人は毎週3億人以上に達する。検査結果の意味を尋ねたり、診察前に質問を整理したり、医師から受けた説明を確認したりするためにChatGPTが使われている。
Brockman氏は、OpenAIの医療事業を対象となる利用者によって三つに分けた。一般消費者、医療従事者、病院などの医療機関である。
一般消費者向けには「ChatGPT Health」を展開している。米国では7月から、Apple Healthや対応する医療機関の診療記録をChatGPTに接続できるようになった。検査結果や服薬、睡眠、運動などの情報をまとめ、以前の検査値との比較や、前回の診察からの変化などを質問できる。
Apple Healthのほか、対応する米国の医療機関ポータル、米Amazon傘下の医療サービスOne Medical、米検査サービスFunction Healthにも対応している。
医療従事者向けには、4月に「ChatGPT for Clinicians」を米国の認証済み医師や看護師、薬剤師などに無料提供し始めた。医学論文や診療ガイドラインを調べて出典付きで回答するほか、診療記録の作成も支援する。
病院向けには「ChatGPT for Healthcare」を展開している。米AdventHealth、Boston Children’s Hospital、Cedars-Sinai Medical Centerなどが導入している。
9月1日には、米電子カルテ大手Epic Systemsとの連携も発表した。
医師はChatGPTからEpicに保存された診療記録、検査結果、服薬情報、専門医の記録などを読み込み、患者のこれまでの経緯を要約したり、前回の診察からの変化を調べたりできる。一部では、Epicの電子カルテ画面から離れずにChatGPTを使える。
さらにPubMed、ClinicalTrials.gov、医薬品情報のDailyMed、米食品医薬品局(FDA)など九つの公的医療データベースにも接続した。
Brockman氏が重視するのは、この三つを別々の事業で終わらせないことだ。同氏は「それぞれが繋がっていけば、相乗効果が生まれるはず」と説明した。
例えば現在、患者が複数の専門医を受診すると、それぞれに病歴や症状を説明し直さなければならないことがある。医療記録も医療機関ごとに分かれている。
Brockman氏は、患者、医師、病院の間で情報をより円滑に扱えるようになれば、こうした負担を減らせるとみている。
もう一つの例として挙げたのが臨床試験だ。
新薬開発では、条件に合った患者を見つけて臨床試験に参加してもらうことが大きな課題になっている。患者の健康状態とClinicalTrials.govなどの情報をAIが理解できれば、本人の同意を前提に、条件に合う臨床試験を見つける仕組みに発展する可能性があるという。
これはまだ将来構想であり、現在のChatGPTが患者を自動的に臨床試験へ紹介しているわけではない。
OpenAIには、医療IT企業とは異なる強みがある。病院や医師にシステムを導入してから患者へ広げるのではなく、すでに毎週3億人以上が健康について質問しているChatGPTから医療市場に入れることだ。
健康分野では、長期間の情報を横断して見ることにも意味がある。
Brockman氏は、自身の家族が長年にわたり複数の専門医を受診した経験を紹介した。それぞれの医師は個別の症状を診ていたが、最終的に一人の医師が複数の症状のつながりに気づいたという。
同氏は、AIが長期間の健康情報を把握し、複数の診療分野をまたいで見ることで、人間の専門分化では気づきにくい関連性を見つけられる可能性があるとみている。
もっとも、現時点でOpenAIが患者と病院の医療データを一つにまとめて自由に扱えるわけではない。
Epicとの連携は読み取り専用で、ChatGPTから電子カルテを書き換えたり、薬を処方したりはできない。一般消費者向けのChatGPT Healthと、HIPAA対応が必要な病院向けChatGPT for Healthcareも分けて運用されている。
OpenAIは、ChatGPT Healthに接続した医療記録やApple Healthの情報、それらを使った会話について、基盤モデルの学習や広告のターゲティングには利用しないとしている。
患者側ですでに巨大な利用者基盤を持つOpenAIが、医療従事者、病院、電子カルテへとどこまで利用を広げられるのか。Brockman氏の今回の発言で、その先にヘルスケア全体をつなぐ構想があることが明確になった。