AI投資の効果は「手応え」頼み 売上で示せる企業はわずか
企業のAI投資は元が取れているのか。米ペンシルベニア大学ウォートン校と米調査会社GBK Collectiveが10月13日に公表した年次調査で、AIが生んだ売上を投資効果の物差しにしている管理職は27%にとどまった。調査を主導したGBK CollectiveパートナーのJeremy Korst氏は米テック系メディアのThe Informationに対し、今の効果の測り方は確かな数字よりも、管理職の手応えに頼っていると語った。
同氏によると、AI投資が財務に与えた効果を実際に数字で確かめるのは「非常に難しい」。調査でも、管理職の80%がAI投資のリターンはプラスだと答えた一方、はっきりとした大きな財務的リターンが出ていると答えたのは28%にとどまった。
調査は2026年7月、従業員1000人以上で年間売上高5000万ドル超の米国企業に勤める1416人を対象にオンラインで実施し、うち1007人が管理職以上だった。投資効果を判断する指標を最大3つまで選んでもらったところ、最も多かったのは「従業員1人あたりの週の節約時間」の40%で、「ミスの減少」が37%で続いた。
今後1〜2年のAIの主な役割を尋ねても、44%が「生産性の向上」を挙げ、「新たな売上や製品を生み出すこと」は8%にとどまった。ウォートン校教授のPrasanna Tambe氏は「多くの企業はAIが業界を変えると信じているのに、AIには時間の節約で価値を証明させようとしている」と指摘する。
自己評価ではあるものの、大きなリターンを報告する人は、売上など成長の成果で効果を測る部署に多い。新規売上や成約率、顧客満足度など成長に関わる指標を1つ以上使う部署では、大きなリターンが出ていると答えた人が35%に上った。時間やコストなど効率の指標だけで測る部署では13%にとどまる。
The Informationによると、テック企業以外でAIが売上増を生んだ例はまだ数えるほどしかない。その一つがデンマーク製薬大手Novo Nordiskだ。臨床試験の監査や運営の調整を担うAIエージェントを開発し、試験の立ち上げから完了までの期間を数週間から数カ月縮めている。新薬を早く発売できれば、特許が切れるまでに稼げる期間が延びる。同社はこの時間の短縮を、年間数千万〜数億ドルの増収につながる成果と見込む。米Walmart最高経営責任者(CEO)のJohn Furner氏も8月の決算説明会で、AIアシスタント「Sparky」を使って買い物をする顧客は、使わない顧客より1回あたりの注文額が40%多いと明らかにした。
Korst氏は、AIはまだ導入の初期段階にあり、今のリターンの水準は過去の技術の普及期と比べても「普通」だとみる。とはいえ、企業はすでに多額の予算を投じている。今年度のAI予算が1000万ドル以上だと答えた管理職は45%と、前年の39%から増えた。一方、今後12カ月で20%を超える大幅増を見込む人は10%と、前年の19%からほぼ半減した。
AI支出がこの先も勢いよく伸び続けるかどうか。The Informationは調査結果から、その鍵は企業がコスト削減ではなく、新規売上や生産量の拡大といった成長の成果で投資効果を示せるかにあると読み解いている。