生成AI推進人材とは?必要スキルと育成・見極め方をわかりやすく解説
「生成AIを導入したが、旗振り役がいなくて全社に広がらない」「誰を推進役に据えればよいのか分からない」。AI活用を本格化させたい企業のDX・人事担当者から、こうした声が増えています。
生成AIを組織の成果に変えるカギは、全社員のリテラシー底上げと同時に、変革を牽引する「生成AI推進人材」を育てることにあります。本記事では、生成AI推進人材とは何か、全社員のリテラシーとの違い、求められるスキル、適性の見極め方、そして育成の進め方までを、実務の視点でまとめました。
生成AI推進人材とは|全社員のリテラシーと何が違うのか
生成AI推進人材とは、生成AIを適切に用いて業務や事業の課題を発見・解決し、組織のAI活用を主導する人材を指します。単にAIを使えるだけでなく、「どの業務にどう適用すれば成果が出るか」を設計し、周囲を巻き込んで定着まで導く役割を担います。
ここで、全社員に求められる「生成AIリテラシー」との違いを整理します。リテラシーは、全ビジネスパーソンが安全にAIを使うための土台であり、いわば全員の最低ラインです。一方の推進人材は、その土台の上に立ち、活用を組織全体へ広げる牽引役です。両者は対立するものではなく、役割の異なる層として補完し合います。
| 観点 | 全社員の生成AIリテラシー | 生成AI推進人材 |
|---|---|---|
| 対象 | 全ビジネスパーソン | 各部門・全社の推進役 |
| 目的 | 安全に最低限使える | 活用を設計し組織へ広げる |
| 到達点 | 個人の業務効率化 | 部門・全社の業務変革 |
推進人材は、経済産業省が示す「AX(AIトランスフォーメーション)をリードする人材」に重なります。同省は2026年6月に「AX時代におけるスキルのあり方検討ワーキンググループ」を設置し、AIを前提とした企業変革を実現するための人材モデルやソフトスキルの整理を進めています。全社員教育と推進人材育成を切り分けて設計することが、投資を成果に変える出発点になります。
出典:経済産業省「第2回 AX時代におけるスキルのあり方検討WG」2026年6月
国はAI人材を5つの類型に整理している
リテラシー層と推進層を分けて考えるのは、国の方針も同じです。2026年7月14日に閣議決定された人工知能基本計画(第Ⅱ期)は、AIの利活用や開発を担う人材像を5つの類型に整理しました。
| 類型 | 役割 |
|---|---|
| AI適正活用人材 | 最低限のリテラシーを身につけ適正にAIを利活用する。全ての国民が目指す人材像 |
| AI実装人材 | 現場に適合したAIソリューションを提供する。AXを進めるうえで中核となる人材 |
| AI研究開発人材 | AIの基礎研究や開発を担う高度専門人材 |
| AIガバナンス人材 | 安全で信頼できるAIのルールや仕組みを整備・運用する人材 |
| AIイノベーション人材 | AIを利活用して経済・社会構造の変革や付加価値の創出を先導する人材 |
生成AI推進人材は、このうちAI実装人材にあたります。全社員をAI適正活用人材へ引き上げながら、中核を担う実装人材を別に育てる。国の方針も、こうした二階建ての考え方に立っています。
出典:内閣府「人工知能基本計画」(第Ⅱ期)2026年7月14日閣議決定
なぜいま生成AI推進人材が必要なのか|データで見る背景
推進人材の重要性は、公的な統計や国の動きからも読み取れます。
企業の活用意欲は高まる一方、日本は使いこなしで世界に遅れている
総務省の調査では、生成AIを「積極的に活用する」「領域を限定して活用する」と回答した日本企業は68.9%で、前年度の49.7%から大きく増えました。導入への意欲は着実に高まっています。

ところが、個人の生成AI利用経験率で見ると日本は58.8%にとどまり、米国とドイツの75.6%、中国の93.6%に届いていません。導入する意欲はあっても、現場で使いこなす力が追いついていないのが実情です。この差を埋めるのが、生成AI推進人材の役割になります。

国の指針も「個人のスキル」から「役割・組織」の設計へ
2026年4月、経済産業省とIPAは「デジタルスキル標準(DSS)ver.2.0」を公表しました。AXの進展やデータ活用の重要性を背景にした大幅改訂で、DXを個人のスキルとして捉える段階から、役割や組織として設計する段階への転換が打ち出されています。推進人材という「役割」を定義し、計画的に育てる発想が、国の指針としても後押しされています。
出典:経済産業省「デジタルスキル標準ver.2.0(DSSver.2.0)を公表します」2026年4月
AI人材の不足も深刻
経済産業省の調査では、2019年時点の予測として、2030年までに日本で最大約12.4万人のAI人材が不足するとされています。外部からの採用に頼るだけでは追いつかず、社内から推進人材を発掘・育成する重要性が高まっています。
生成AI推進人材が担う4つの役割
推進人材が実際に何をするのかは、4つの役割に整理できます。DX部門や情報システム部門との分担とあわせて、まず全体像を確認しましょう。
| 役割 | 生成AI推進人材(事業部門側) | DX部門・情報システム部門 |
|---|---|---|
| ユースケースの発掘 | 自部門の業務から適用候補を洗い出す | 技術的な実現可否とコストを判定する |
| 現場からの相談対応 | 一次窓口として使い方の相談を受ける | ルールやセキュリティに関わる判断を担う |
| 成功事例の型化と共有 | 有効なプロンプトや手順をテンプレートにする | 共有の基盤と仕組みを整備する |
| 効果の可視化と報告 | 自部門の削減時間や成果を記録する | 全社の利用データを集約し経営へ報告する |
この分担は、先進企業の実態とも一致します。総務省の令和8年版情報通信白書によると、AI活用で先進的な取組を進める企業では、事業部門の現場が持つ個別のニーズや課題意識が変革の起点になっていました。そこにDX推進部門が加わり、アイデアの創出、技術的な助言やセキュリティ対策、効果測定、AIスキルを学ぶ機会の設定といった支援を担当します。具体的な業務課題にAIを適用してこそ価値を生み出せるため、各社に共通してこの形がとられているといいます。
それぞれの役割を順に見ていきます。
自部門の業務からユースケースを見つける
どの作業に時間がかかっているか、どこで手戻りが起きているかは、その業務を担当している人でなければわかりません。推進人材はまず自部門の業務を棚卸しし、AIを適用できそうな候補を挙げます。技術的に実現できるかどうかの判断はDX部門に委ね、現場側は業務の課題を持ち込む役割に徹するとよいでしょう。
現場の相談を受ける一次窓口になる
使い方の相談がすべてDX部門や情報システム部門に集中すると、案件が積み上がって現場が待たされます。日常的な疑問を部門内で解消できれば、専門部門はルールやセキュリティの判断に専念できます。推進人材が一次窓口を務めることで、組織全体の動きが速くなります。
成功した使い方を型にして共有する
うまくいった使い方は、他の人が再現できる形に整えることで組織の資産になります。有効なプロンプトや手順をテンプレートにまとめ、部門内や他部門へ広げていきましょう。個人の工夫のままにしておくと、その人が異動した時点で活用が止まってしまいます。
効果を記録して経営に報告する
削減できた時間や活用している人数を記録し、経営への報告につなげます。効果が数字で見えなければ、追加の投資判断も難しくなるためです。全社データの集約はDX部門が担うので、推進人材は自部門の実績を残すところを受け持ちます。
4つの役割を並べると、推進人材はDX部門の代わりを務める存在ではないことがわかります。デジタルスキル標準も、業務に知見のある人材がリテラシーを身につけることで、DXの可能性の発掘と専門人材との協働が進むと説明しています。人選で重視したいのは、AIに最も詳しい人かどうかではなく、自部門の業務を説明でき、周囲に働きかけられるかどうかです。
出典:IPA・経済産業省「デジタルスキル標準ver.2.0」2026年4月
生成AI推進人材に求められる5つのスキル
推進人材に必要なのは、高度なプログラミング能力ではありません。経済産業省「生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方」が示すように、ビジネススキルと生成AIの掛け合わせが核になります。実務で重視したいのは、次の5つです。
出典:経済産業省「生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方2024」2024年6月
あわせて参照したいのが、2026年4月に改訂されたデジタルスキル標準ver.2.0です。同標準は生成AIの利用にあたって求められるマインド・スタンスを定義しており、以下の5つはその内容とも重なります。
出典:IPA・経済産業省「デジタルスキル標準ver.2.0」2026年4月
1. 課題を発見し、問いを立てる力
「どの業務にAIを使えば成果が出るか」を見抜く力です。生成AIは問いの質で成果が変わるため、業務の課題を構造化し、適切な問いを立てられることが推進人材の土台になります。
デジタルスキル標準は、生成AIを「問いを立てる」「仮説を立てる・検証する」といったビジネスパーソンとしてのスキルと掛け合わせて使う姿勢を求めています。裏を返せば、生成AIだけで成果が出るとは想定されていないということです。問いの質は、自部門の業務をどれだけ理解しているかで決まります。同標準は行動例として、従来の進め方の理由を自ら問い、よりよい方法がないか考えることも挙げました。
2. プロンプトの習熟と検証力
指示を工夫して狙った出力を引き出し、その結果が正しいかを検証する力です。生成AIは誤った内容をもっともらしく出力することがあるため、鵜呑みにせず検証できることが欠かせません。
同標準は、生成AIの利用方法として指示(プロンプト)の手法を学習項目に挙げています。一方で検証については、「事実に基づく判断」という姿勢の項目に位置づけました。行動例として示されているのは、生成AIの出力に対し客観的な事実を確認したうえで利用することです。プロンプトの工夫と出力の検証は、技術というより日々の判断の習慣として身につくものです。
3. リスク・ガバナンスの理解
情報漏洩や著作権侵害、倫理的な問題などのリスクを理解し、安全な利用ルールのなかで活用を広げる力です。推進人材は現場のルールづくりの起点にもなります。
ver.2.0の改訂では、共通スキルリストにAIガバナンスに関するスキルが加わりました。AI倫理、ガイドライン整備、責任あるAIの管理といった項目です。全社員に求められるのは、期待しない出力や著作権の侵害、情報漏洩、倫理的な問題に注意するという理解の段階でしょう。推進人材にはその先の役割、つまりルールをつくって社内に周知する側の働きが期待されます。
4. 現場を巻き込む推進力
自分が使えるだけでなく、同僚や他部門を巻き込み、活用を定着させる力です。成功事例やプロンプトを共有し、周囲の「使ってみよう」を引き出す働きかけが求められます。
同標準は、リーダーシップやコラボレーションといったパーソナルスキルを、DXを推進する全ての役割に共通して求められるものと位置づけています。周囲を巻き込むコミュニケーション、ステークホルダーマネジメント、ファシリテーション、心理的安全性などが具体的な項目です。技術的なスキルは外部の支援で補えますが、現場を動かす力だけは社内の人材が担うほかありません。
5. 学び続ける姿勢
生成AIは進化が速く、チャット形式から、自ら計画して作業を進めるAIエージェントへと使われ方が広がっています。デジタルスキル標準ver.2.0でも、AIエージェントが共通スキルリストの学習項目に加えられました。変化にアンテナを張り、学び続ける姿勢が推進人材の前提になります。
出典:IPA・経済産業省「デジタルスキル標準ver.2.0」2026年4月
同標準は「変化への適応」の行動例として、組織が提供する研修を受けるだけでなく、能動的に新しい知識を得るために行動することを挙げています。さらに、これまでの社会人経験で身につけた知識や経験則が古くなっていないか振り返る必要にも触れました。研修を受けたかどうかではなく、自分の使い方を定期的に点検できているかどうかが問われます。
出典:IPA・経済産業省「デジタルスキル標準ver.2.0」2026年4月
生成AI推進人材の見極め方|適性をどう可視化するか
推進人材は、役職や勘で選ぶと期待した成果につながりにくくなります。適性をデータで可視化し、候補を客観的に見極めることが失敗を防ぐ近道です。見極めの観点は、大きく3つに整理できます。
第一に、実務での活用レベルです。生成AIを使った成果物を、実務に近い課題でどこまで作れるかを測ります。第二に、変革を推進する素養です。課題設定力や巻き込み力といった、スキル以外の適性を把握します。第三に、現在地と伸びしろです。組織のなかで誰が推進役に近く、どこを伸ばせばよいのかを俯瞰します。
これらは、実務レベルを測る活用テストと、変革推進の素養を捉えるアセスメントを組み合わせることで可視化できます。感覚ではなくデータに基づいて候補を選ぶことで、育成の投資対効果が高まります。
お役立ち資料|生成AI推進を任せる人材、どう見極める?
生成AI推進の成果は、“誰に任せるか”で大きく変わります。本資料では、生成AI推進人材に必要なスキルとレベルの判定方法、スキル以外の適性の見極め方、活用レベルの可視化を育成設計につなげる進め方を解説します。無料で資料を配布しているので、ぜひ以下よりご覧ください。
\こんな方におすすめの資料です/
- 生成AI推進を任せる人材の選定基準がない
- 感覚や推薦に頼った人選になっている
- 推進人材のレベル可視化と育成設計につなげたい
生成AI推進人材の育成ステップ|見極め→育成→実装
推進人材は、一度の研修では育ちません。「見極める → 育てる → 現場で活かす」という流れを設計すると、育成が組織の力として積み上がります。
ステップ1:見極める(適性の可視化)
前述のアセスメントで候補者の現在地と適性を把握します。組織全体のどこに推進役の芽があるかをデータで捉えることで、育成計画を勘ではなく事実に基づいて立てられます。
ステップ2:育てる(実践型で鍛える)
候補者に、実務データや自部門の課題を使ったハンズオンで手を動かしてもらいます。課題設定からプロンプト設計、検証までを演習で反復し、推進に必要なスキルを実践的に鍛えます。
ステップ3:活かす(現場で推進させる)
育成した人材を各部門の推進役に据え、実際のユースケース開発を任せます。成功事例やプロンプトを社内で共有する仕組みを整えると、活用が属人化せず組織全体へ広がります。経営層が関与して推進役の活動を後押しすることも、定着の重要なカギです。
生成AI推進人材を任命した後に整えたい3つの条件
推進役を任命したものの活動が広がらない、という相談は少なくありません。原因の多くは本人の資質ではなく、役割を支える条件が整っていないことにあります。よく見られる3つの課題を紹介します。
兼務のままで推進の工数が確保されていない
推進役に任命しても、担当業務はそのままというケースが目立ちます。通常業務には締め切りがあるため、期限のない推進活動はどうしても後回しになりがちです。任命はしたものの活動が始まらない状態は、多くの場合ここに原因があります。推進の活動を業務として工数に組み込み、経営が正式に承認しておくことが必要です。担当時間の何割を充てるかを明示すれば、本人も周囲も動きやすくなります。
権限がなく他部門への働きかけが進まない
推進役の活動は自部門だけで完結しません。他部門の業務にAIを適用したり、全社の利用ルールについて提案したりする場面が出てきます。位置づけが曖昧なままでは、こうした働きかけはすべて個人的な依頼として扱われ、協力を得にくくなります。経営への報告ラインを設け、推進役が誰の権限のもとで動いているかを社内に示しておきましょう。財務省の特別調査で紹介された事例からも、経営者が主体的に関与する企業ほどAI活用が進展する傾向が読み取れます。
出典:財務省「地域におけるAI活用を巡る現状(特別調査)」令和8年1月
成果が評価に反映されず意欲が続かない
推進活動の成果は、担当業務の数字と比べて見えにくいものです。他部門の効率化に貢献しても、記録が残らなければ本人の評価にはつながりません。この状態が続けば、意欲は次第に下がっていきます。名古屋鉄道では、知見を共有するチャットルームへの参加と利用実績シートの入力を必須とし、推進の活動を個人の努力ではなく仕組みで支えています。活動の記録が残っていれば、評価にも次の投資判断にも活用できます。
ここまで挙げた3つは、いずれも任命した後の設計で解決できます。工数と権限、そして評価への反映を整えておくと、推進人材は役割として機能しはじめます。
出典:エクサウィザーズ「導入初月から月間200時間相当の業務効率化を実現。名古屋鉄道のChatGPT活用方法と効果とは」
生成AI推進人材の育成を加速する「AX人材育成」
生成AIの活用は、AIを前提に業務や組織を変革するAX(AIトランスフォーメーション)の段階へ進んでいます。推進人材を計画的に育てるには、「見極め」から「育成」「実装」までを一気通貫で支える仕組みが有効です。
エクサウィザーズの「AX人材育成ソリューション」は、AIとの協働を前提に、業務効率化から事業変革までを担う人材を育てるサービスです。「測る → 育てる → 活かす」の3ステップで、前述の育成の流れをそのまま支えます。
- 測る(見極め): 約20分の「生成AI活用テスト」で実務活用レベルを測定し、経済産業省「デジタルスキル標準」準拠のDX人材アセスメント「DIA」と組み合わせ、変革推進の素養まで可視化します。推進人材の見極めに直結します。
- 育てる: 経営層・中核リーダー・全社員の階層別研修と、eラーニング「AIリテラシーコース」で、推進役に必要なスキルを段階的に育てます。
- 活かす: Microsoft Copilot、Gemini、Claude、Difyなどを用いた実践型ハンズオンで、AIエージェントの業務実装まで踏み込みます。
さらに、アセスメントのスコアをもとに最適な研修を自動提案する「ハンズオン研修レコメンド機能」を備え、「誰を推進役に育てるか」をデータで示せます。土台となる「エクサベース DXアセスメント&ラーニング」は、DX人材アセスメント市場でシェア1位(富士キメラ総研調査・2023年度)、累計2,500社・43万人に利用されています。

