生成AI活用事例|業務別・業界別のまとめと自社で成果を出す進め方
生成AIの活用事例を調べる目的は、他社の取り組みを知ることだけではありません。自社のどの業務に適用できるか、どうすれば成果につながるかを見極めることが本当の狙いでしょう。
本記事では、生成AIの活用事例を業務別・業界別に整理します。そのうえで、事例に共通する成功パターンと、他社の成果を自社で再現するための進め方を解説します。
事例を見る前に|「導入済み」から「成果創出」へ移った段階
総務省の調査によると、2025年度に何らかの業務で生成AIを利用している日本企業は86.4%に達しました。導入の有無を議論する段階は、すでに過ぎています。
一方で、生成AIを使いながらも組織的な取り組みがないと回答した企業は約27%ありました。個々の社員が思い思いに使う状態と、組織として成果を出す状態の間には、まだ距離があります。

生成AIの企業利用と組織的取り組みの状況(2025年度)。業務利用は86.4%に達する一方、組織的な取り組みがない企業が約27%(出典:総務省「令和8年版 情報通信白書」2026年をもとに作成)
個人の利用経験率で見ると、日本は58.8%です。2024年度の26.7%から急伸したものの、中国93.6%、米国とドイツの75.6%には及びません。

生成AIの個人利用経験率(国別・2025年度)。中国93.6%、米国・ドイツ75.6%に対し日本は58.8%
(出典:総務省「令和8年版 情報通信白書」2026年をもとに作成)
事例を読み解くときは、「何をしたか」だけでなく「どう組織に定着させたか」に目を向けると、自社への応用がしやすくなります。
業務別の生成AI活用事例
まず、部門を問わず適用しやすい業務から見ていきます。効果が測りやすく、着手のハードルも低い領域です。
自社の業務に置き換えて読めるよう、どの部門にも共通する6つの業務を取り上げます。文書作成から開発まで、それぞれどんな使い方が定着しているのかを確認してください。
文書作成・資料作成
提案書や報告書、議事録の作成は、生成AIの効果が出やすい業務です。過去の案件データや製品情報を読み込ませて下書きを生成し、人が最終確認する運用が広く採られています。
資料作成に絞った進め方は、関連記事「資料作成を生成AIで効率化するには?」で解説しています。
情報収集・要約
長文の資料や議事録、論文などを要約する用途です。社内文書を検索して回答させる仕組みを整えると、調べものにかかる時間を削減できます。出力の裏づけを確認する運用ルールとあわせて導入すると安全です。
企画・アイデア出し
企画の初期段階で、切り口を大量に出す用途です。人が思いつきにくい観点を引き出し、そこから絞り込む使い方が向いています。最終判断は人が担う前提で使うと成果につながります。
営業・カスタマーサポート
営業では、提案書のたたき台作成やロールプレイングの相手役としての活用が進んでいます。AIを使った営業ロープレは、関連記事「AI営業ロープレとは」で詳しく扱っています。カスタマーサポートでは、問い合わせ内容の要約や回答案の生成による応対時間の短縮が代表例です。
バックオフィス・業務自動化
経理や総務、人事などの定型業務では、生成AIとワークフローツールを組み合わせた自動化が広がっています。AIエージェントに一連の作業を任せる構成も現実的になりました。具体的なワークフローは、関連記事「n8n活用事例20選」が参考になります。
開発・エンジニアリング
コード生成やレビュー、テスト作成での活用です。開発支援ツールを使い、実装からレビューまでを効率化する動きが定着しています。
業界別の生成AI活用事例
同じ生成AIでも、扱う情報や業務の性質が違えば成果の出る場所は変わってきます。ここでは5つの業界について、活用が進んでいる領域を一覧にまとめました。自社に近い業界の欄から読み進めると、検討の糸口が見つかるはずです。
| 業界 | 主な活用領域 | 詳しい記事 |
|---|---|---|
| 製造業 | 生産計画、品質検査、技術文書の活用 | 製造業のAI/生成AI活用事例 |
| 小売業 | 需要予測、接客支援、販促コンテンツ作成 | 生成AI×小売業の成功事例 |
| 金融業 | 審査業務の支援、顧客対応、文書チェック | 金融DXの課題とポイント |
| 建設業 | 図面や仕様書の確認、施工計画の検討 | 建設業DXの現状と課題 |
| 教育 | 教材作成、個別最適な学習支援 | 教育DXとAI活用 |
- 製造業: https://exawizards.com/column/article/ai-cases-of-manufacturing/
- 小売業: https://exawizards.com/column/article/ai-cases-of-retail-business/
- 金融業: https://exawizards.com/column/article/dx/dx-financial/
- 建設業: https://exawizards.com/column/article/dx/dx-construction/
- 教育: https://exawizards.com/column/article/dx/education-dx-introduction/
事例に共通する3つの成功パターン
社内展開に成功した企業の進め方を並べてみると、業種や規模を問わず似た型が浮かび上がってきました。ここでは3つの共通点を取り上げ、それぞれ何をどう決めているのかを見ていきます。自社の進め方と照らし合わせる材料としてお使いください。
- 対象業務を絞ってPoCから始めている
- 自社の実データと実務課題で検証している
- 部門ごとに推進役を置いている
対象業務を絞ってPoCから始めている
一つ目の共通点は、対象業務を絞ってPoCから始めていることです。
全社に一斉展開すると、成果が出ても要因を特定できません。部署ごとに業務も習熟度も違うため、どの条件が効いたのかが見えなくなるからです。範囲を1〜2業務に絞れば、着手前と後の作業時間を並べて比較でき、投資に見合う効果があったかを判断できます。
この判断材料があれば、次にどの部門へ広げるかも根拠を持って決められます。逆に最初から全社で始めると、うまくいかなかったときに撤退の判断もつかず、投資だけが積み上がりかねません。
自社の実データと実務課題で検証している
二つ目の共通点は、検証の題材を自社の実務から選んでいることです。
ベンダーのデモで動いた機能が、自社の文書や業界用語では期待どおりに働かないことは珍しくありません。社内でしか通じない略語や、独自の書式が混ざるためです。自社の実データで試せば、こうした食い違いを検討の早い段階で見つけられます。
題材は、担当者が日常的に時間を取られている作業から選んでください。効果の有無をその場で判断でき、成果が出れば現場がそのまま使い続けてくれます。実務から離れた課題で試した場合、結果が良くても本番では使われないまま終わってしまうでしょう。
部門ごとに推進役を置いている
三つ目の共通点は、部門ごとに推進役を置いていることです。
環境を配っただけでは、実際に使うのは一部の積極的な社員にとどまります。日常業務に追われている社員にとって、新しい道具の使い方を自分で調べる時間はなかなか取れません。誰かが使い方を示し、相談を受ける役割が要ります。
成果を出した企業では、この役割を部門ごとに置いていました。うまくいった使い方を集めて社内で共有したり、定期的に勉強会を開いたりと、現場が使い始めるきっかけを作り続けています。人選の方法は一つではなく、部門長が候補者を指名する形もあれば、社内コンテストや事例の共有会を開いて手を挙げた社員に任せる形もあります。
どちらを選ぶ場合でも、推進役の多くは本業との兼務です。活動に充てる時間を上長があらかじめ認めておかなければ、任命しても動けません。推進役に必要なスキルは、関連記事「[AX人材の重要性とは](https://exawizards.com/column/article/ax-talent/)」で整理しています。
AI研修をしても「現場で使われない」のはなぜ?
AI研修を実施しても、現場で使われないまま終わってしまうケースがあります。本資料では、研修が“やりっぱなし”になる原因を整理し、学びを現場の行動と成果につなげる仕組みづくりを、先行企業の成功事例とともに解説します。無料で配布していますので、ぜひ以下よりご覧ください。
\こんな方におすすめの資料です/
- AIを導入したが、現場での活用が広がっていない
- 研修を実施しても、行動変容や定着につながっていない
- 他社のAI人材育成の事例を参考にしたい
事例が「自社で再現できない」のはなぜか
他社と同じツールを導入しても、同じ成果が出るとは限りません。差が生まれる要因は、ツールそのものより人と組織の側にあります。ここでは、社内展開が止まる典型的な5つの要因を挙げます。
- 目標と優先順位が定まっていない
- 効果を測る仕組みがない
- 使える人が限られている
- 利用ログでは活用の質が見えない
- 定着の仕組みがない
目標と優先順位が定まっていない
最初につまずくのは、何のためにAIを使うのかが社内で共有されていないケースです。目的が曖昧なままでは、どの業務から着手するかを誰も決められません。会議を重ねても結論が出ないまま、時間だけが過ぎていきます。
着手前に決めておきたいのは、次の2点です。
- AIで何を実現するのか。人手不足を緩和したいのか、提案の質を高めたいのかといった目的
- どの部門のどの業務から着手するのか。投資と人手を優先的に振り向ける対象
いずれも現場だけでは決められません。経営が方針を示さないまま現場に検討を任せると、部門ごとに判断がばらつき、全社への展開が進まなくなります。
優先順位は、業務量の多さだけで決めるものではありません。AIが扱いやすい形で情報が残っているか、担当部署に試す余力があるかも見ておく必要があります。紙の書類が中心の業務や、繁忙期に入っている部署から始めると、成果が出る前に取り組みが止まってしまいます。
効果を測る仕組みがない
目的が決まっても、効果を測る仕組みがなければ成果を説明できません。現場が「便利になった」と感じていても、それを数字で示せなければ、予算の継続を経営に認めてもらうのは難しくなります。
つまずきやすいのは、導入してから効果を測ろうとすることです。使い始めた後では、以前どれだけ手間がかかっていたかを思い出せません。対象業務を決めた段階で、現状の作業時間を控えておいてください。比べる相手がなければ、成果を示しようがないためです。
見ておきたいのは、次のような点です。
- 対象業務にかかっていた時間が、どれだけ短くなったか
- 仕上がりの質は保てているか。手直しや差し戻しが増えていないか
- 対象部署の何割が実際に使っているか
時間の短縮だけを追うと、質が落ちていても気づけません。使っている人数まで見ておけば、成果が一部の社員に偏っていないかも把握できます。
使える人が限られている
同じ環境を用意しても、活用の深さは人によって大きく変わります。定型的な文章生成で止まる社員と、業務プロセスの見直しにまで踏み込む社員では、生み出す成果が違います。組織全体の活用レベルを把握しないまま施策を打つと、投資が空回りしがちです。
差が出るのは、指示の出し方です。使いこなす社員は、前提や制約を伝えたうえで出てきた内容を確かめ、指示を出し直しながら精度を上げていきます。一方、一度の指示で出たものをそのまま使う社員も少なくありません。この違いは、研修を一度開いただけでは埋まらないものです。
誰がどのレベルにいるかを把握しないまま研修を組むと、全員に同じ内容を配ることになります。上位層には物足りず、初級層には難しいという結果に終わりがちです。
利用ログでは活用の質が見えない
利用状況をツールのログで管理する企業は多くあります。ただしログからわかるのは「使ったか」までです。「どう使っているか」という質は見えません。回数が多くても成果に結びついていない場合があるため、スキルと姿勢の両面を測る視点が必要になります。
たとえば利用回数が突出している社員が、実際には同じ質問を何度も繰り返しているだけ、というケースがあります。逆に回数は少なくても、一度のやり取りで業務に使える成果物を得ている社員もいます。
ログの数字だけを見て活用が進んでいると判断すると、打ち手を誤ります。回数の多い部署を成功例として扱ってしまい、本当に成果を出している社員のやり方が共有されないまま終わりかねません。
定着の仕組みがない
研修を実施して終わりにすると、時間の経過とともに利用は落ち込みます。成功事例やプロンプトを共有する場、現場の疑問に答える窓口、経営層の後押しといった仕組みがあるかどうかで、定着度は変わります。
利用が落ち込む理由ははっきりしています。新しい進め方は、慣れた方法よりも最初のうちは時間がかかるためです。研修直後は試してみても、繁忙期に入れば従来のやり方に戻ります。
つまずいたときに聞ける相手がいるかどうかも分かれ目になります。うまくいかない経験が続けば、その社員はもう使わなくなるでしょう。
自社で成果を出す進め方|4つのステップ
ステップ1:適用業務を選ぶ
時間がかかっている業務、繰り返しが多い業務、文章や情報を扱う業務から候補を挙げます。効果を数値で測れるかどうかも選定基準に加えてください。
ステップ2:小さく試して検証する
選んだ業務で、自社の実データを使って試します。作業時間や品質の変化を記録し、改善効果を数値で押さえましょう。この段階で運用ルールとリスク対策も整えておきます。
ステップ3:現在地を測り、育成につなげる
部門展開の前に、社員の活用レベルを把握。誰がどこまで使えるかがわかると、研修の対象と内容を根拠を持って決められます。スキルの可視化については、関連記事「[AI人材育成のポイント](https://exawizards.com/column/article/ai-talent-development/)」も参考になります。
ステップ4:横展開と定着
成果が出た業務を他部門へ広げ、事例とプロンプトを社内で共有します。推進役を各部門に置き、成果を定期的に振り返る運用にすると、活用が組織の力として積み上がります。
生成AI活用事例|社内展開を進めた4社の取り組み
成功パターンを実際の企業がどう形にしたのか、4社の取り組みから確認します。展開の規模も進め方も異なりますが、いずれも人と組織の設計に踏み込んでいる点が共通しています。
- イオン|全業態90社・約1000人へ3段階の研修で展開
- 九州電力|推進役39名の育成で職場の利用率を高める
- フジパングループ|全社員参加のコンテストで担い手を発掘
- サッポロホールディングス|効果を測定して次の投資につなげる
イオン|全業態90社・約1000人へ3段階の研修で展開
イオンは、DX人材育成組織を軸に、企業向けの生成AI環境を全業態90社・約1000人へ約3カ月で展開しました。導入前は対象者の約6割が初級者だったため、上級・中級・初級の3段階に分けた研修を3カ月で計7回開催しています。現場で活用が進んだ社員が講師として登壇する仕組みも取り入れ、利用率の向上につなげました。
注目したいのは、ツール提供と育成を同時に設計した点です。習熟度に応じて研修を分け、現場を巻き込んだことが、短期間での全社展開を後押ししました。
出典:エクサウィザーズ「イオン×エクサウィザーズ 全業態90社1000人にexaBase 生成AIを3カ月で導入」2025年3月
九州電力|推進役39名の育成で職場の利用率を高める
九州電力は2023年に生成AIツールを全社へ導入したものの、使い方や自分の業務への適用方法がわからないという声が多く、現場への定着が課題となっていました。そこで、各支店のICT担当者と社内公募で手を挙げた社員の計39名を「DXアンバサダー」とし、職場の身近な相談窓口を担う推進役に据えています。アンバサダー向けには、生成AIの基本構造やプロンプトの前提知識を押さえたうえで実際に手を動かす、ハンズオン形式の研修を取り入れました。
研修後、あるアンバサダーが職場の会議で20分程度のミニ勉強会を開いたところ、その部署の生成AI利用率は翌日から上昇しました。アンバサダー同士のコミュニティではプロンプトの試行結果が共有され、他部署から使い方を尋ねられるケースも増えています。推進役を先に育て、職場単位で活用を広げる進め方は、全社導入後に利用が伸び悩んでいる企業にとって有効な選択肢になります。
出典:エクサウィザーズ「各職場が主体性を発揮。九州電力の成果に繋がる実践型AI人材育成」
フジパングループ|全社員参加のコンテストで担い手を発掘
フジパングループは、全社員を対象とした「生成AIチャレンジコンテスト」を実施しました。工場の製造ラインを知り尽くしたベテラン社員からIT知識に長けた若手まで、幅広い職種と年齢層の社員が参加し、業務効率の向上や新サービスの創出、次世代商品の開発に取り組んでいます。
研修で使い方を教えるのではなく、コンテストという参加の仕掛けによって、現場自身に使い道を見つけてもらう進め方です。推進役をあらかじめ指名するのではなく、応募を通じて意欲のある担い手を見つけ出す方法として参考になります。
出典:エクサウィザーズ「Exa Enterprise AIがフジパングループの全社員を対象とした生成AIチャレンジコンテストを支援」2025年3月
サッポロホールディングス|効果を測定して次の投資につなげる
サッポロホールディングスは、生成AIの活用で5か月連続して工数削減の効果が利用料を上回る状態を確認しながら、対象を広げてきました。独自プロンプトの開発と推進人材の育成を進め、年間10,000時間の削減を見込む段階に達しています。
この事例が示すのは、効果測定を続けることの意味です。削減時間を数字で押さえておくと、投資対効果を経営に説明でき、次の展開の予算も確保しやすくなります。導入して終わりにせず、成果を測り続ける運用が活用を支えています。
出典:エクサウィザーズ「5か月連続で工数削減効果が利用料を上回る。サッポロホールディングスの生成AI活用」
4社に共通するのは、ツールの導入と同時に、誰がどう使うかを設計している点です。研修を階層別に分ける、意欲のある担い手を見つける、効果を測って共有する。いずれも組織側の工夫であり、ツールの性能差ではありません。
事例を自社の成果に変える「AX人材育成」
他社事例を自社で再現する鍵は、「誰が使いこなすか」を設計することにあります。そのためには、現在地を測り、育て、実務で活かす流れを一気通貫で回す仕組みが有効です。
エクサウィザーズの「AX人材育成ソリューション」は、AIとの協働を前提に、業務効率化から事業変革までを担う人材を育てるサービスです。約20分の「生成AI活用テスト」で実務での活用レベルを測り、経済産業省「デジタルスキル標準」に準拠したDX人材アセスメント「DIA」と組み合わせて、スキルと変革推進の素養を可視化します。
その結果をもとに、経営層・中核リーダー・全社員それぞれの階層別研修を設計し、Microsoft CopilotやGemini、Claude、Difyなどを用いた実践型ハンズオンで業務実装まで踏み込みます。アセスメントのスコアから最適な研修を自動で提案する「ハンズオン研修レコメンド機能」もあり、誰に何を学ばせるかをデータで示せます。
土台となる「エクサベース DXアセスメント&ラーニング」は、DX人材アセスメント市場でシェア1位(富士キメラ総研調査・2023年度)、累計2,500社・43万人に利用されています。本記事で挙げた成功パターンを、自社で再現するための仕組みとして活用できます。

