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    DX育成組織が活用と定着を支援、高利用率をさらに向上

イオン×エクサウィザーズ 全業態90社1000人に「exaBase 生成AI」を3カ月で導入
DX育成組織が活用と定着を支援、高利用率をさらに向上

2024年6月17日

イオン株式会社 イオンデジタルアカデミー

日本国内外300社以上の企業で構成される大手流通企業であるイオングループ。千葉市に本社を置き、従業員数は約57万人。2022年度の営業収益は約9兆1168億円。「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する」との基本理念を掲げている。

概要

overview

イオングループは、2021〜2025年度における中期経営計画として、「デジタルシフトの加速と進化」「サプライチェーン発想での独自価値の創造」「新たな時代に対応したヘルス&ウエルネスの進化」「イオン生活圏の創造」「アジアシフトの更なる加速」を掲げている。グループ内のDX人材育成を目的としたイオンデジタルアカデミーでは、リスキリングによるDX人材育成とそれを支える企業文化の醸成に取り組んでいる。生成AIサービスの導入でも、研修や活用情報の提供、利用者間の情報交換など、同アカデミーが大きな役割を果たしている。

課題

生成AIサービスを利用するための環境を迅速に導入したいが、デジタルリテラシー、特にAIに関する知識にばらつきがあった。実際に業務で活用していく必要があるが、グループ内にさまざまな業態があり、各企業、各ユーザーの利用用途が把握できていない面もあった。

解決

SaaS型で迅速に導入できるExa Enterprise AIの¬exaBase 生成AIを採用し、検討開始からわずか約3か月で、全業態90社・約1000人にAI試用環境の提供を開始した。イオンデジタルアカデミーが、利用ルールの徹底、研修、利用者同士の交流まで支援することで、月を追うごとに利用率が向上した。

事例の紹介

 2021~2025年度中期経営計画における成長戦略のひとつに「デジタルシフト」を掲げるイオングループ。店舗・デジタルが融合したシームレスな顧客体験、データ・AI・経験に基づく迅速な意思決定など、各分野でデジタルシフトを加速させている。

 それを支えるデジタル人材の育成にも力を入れている。全従業員がデジタルを学べる場を提供する「イオンデジタルアカデミー」では、“誰ひとり取り残さない”ために、経営層や本社のスタッフだけではなく、 店舗スタッフも含めたDX人材の育成に取り組んでいる。

 そしてDX人材育成活動の一環で2023年12月、Exa Enterprise AIの企業向けChatGPT「exaBase 生成AI」を導入した。 グループの全業態、約1000名という大規模に、「AEON DIGIACAお試し生成AIサービス」として、約3カ月という短期で展開を完了した。そして利用の度合いも月を追うごとに増えている。これを実現した背景には、イオンデジタルアカデミーを軸にした、緻密な導入と活用の戦略があった。

グループの全業態で一斉に活用を開始、管理や営業・サービスでも活用

 今回のexaBase 生成AIの導入は、「お試し環境」と銘打つものの、グループ全体にわたる大規模なものだ。ホールディングス(HLD)、総合スーパー(GMS)、スーパーマーケット(SM)、ディスカウントストア(DS)、サービス、専門店、金融、ディベロッパー(DV)、ヘルスケア&ウェルネス(H&W)、機能(IT)など全業態の90社約1000人が利用している。

図 業態別の利用状況(出所:イオンデジタルアカデミー)

 部門としては、デジタル・ICT、システムの従業員の利用がそれぞれ200人超と多いが、管理部門も183人と同等に利用している。また、4番目に営業・サービスが118人と多く活用しているのも特筆できる。本部長以上の役員・経営層も61人と利用率が高い。

トップユーザーは、レポート和訳やコード生成で月70時間削減

図 生成AI利用ユーザーの効果(出所:イオンデジタルアカデミー)

 結果として活用度のトップのホールディングスの人事部のユーザーは、コード生成や海外レポートの翻訳で月間70時間の業務時間を削減。コード生成に利用しない3番目のユーザーも案内文の英訳やSNSでの施策のアイデア出しなどで50時間近い、削減効果を導出していたのだ。

図 1人当たりの生成AIサービスの利用トークン数の推移(出所:イオンデジタルアカデミー)

 そして、生成AIの利用は右肩あがりとなっている。多くの企業では、導入当初活用が進むものの、次第に低下していく傾向がある。これに対して、イオンでは2月の時点で導入した12月の実績を約1割上回る結果となった。

 イオンでは、なぜこのように現場での活用を根付かせることができたのか。そこにはイオンデジタルアカデミーを中核とした綿密な導入・活用計画の策定と、根付かせるための戦略実行があった。

ホールディングスでSaaSの“お試し環境”を提供

 イオンデジタルアカデミーでは2023年に入って、DXの最新動向として生成AIの基礎を学ぶための社内勉強会を定期的に開催しており、参加者からは「生成AIを実際に試してみたい」といった声が日に日に高まってきていた。

 「セキュアに業務で利用できる、生成AIお試し環境を使ってみたいと思いますか?」とアンケートをしてみたところ、8割を超えるグループ内の企業が「利用したい」と回答してきた。この情報を経営層に示したことも、導入を後押しした。

写真 イオンの吉田氏。ICT推進部門で、セキュリティ・ITガバナンスを担当している

 「一方で、経営的な目線でいくと、生成AIを導入するには投資対効果のファクトが必要とされ、現場では使ってみないと効果はわからないというのが実際だった」。イオン ICT推進 セキュリティ・ITガバナンス担当の吉田俊介氏は、こう振り返る。 

 こうした状況で、経営層に納得してもらい、グループ全体の現場での活用を促進するにはどうするべきか。

 吉田氏らが見出したのが「イオンデジタルアカデミーの活動として、セキュアなお試し環境を、ホールディングスの負担で導入。その上で、生成AIのリテラシー向上、レベル別の活用研修に取り組む」というものだった。「生成AIはこれまでにない取り組みのため、机上で話していても議論が煮詰まらない。まずは実際の環境を導入して試用することを考えた」(吉田氏)。 

イオンデジタルアカデミー専用のUIを提供

 自社での生成AI環境の構築も検討したものの、すでに2023SaaS型で商用サービスを提供している実績を評価し、exaBase 生成AIを採用することにした。前述の通りホールディングスで費用を負担し、グループにアカウントを一斉に展開した。

 3カ月という短期で導入できた背景には、exaBase 生成AIがセキュリティやコンプライアンス面に配慮していた側面がある。プロンプトの禁止ワードの管理や、学習のオプトアウトなどに対応するほか、エクサウィザーズグループとして、情報セキュリティマネジメントシステム、 クラウドサービスセキュリティ、プライバシー情報マネジメントシステムの各国際的な規格を取得している。

 そして吉田氏が、イオンデジタルアカデミーと同時に、イオングループのITガバナンス、ITインフラも担当していることもスムーズな意思決定と実行につながった。規模の大きな企業グループでは、ITベンダーとの交渉以外に、グループ各社の状況の把握と擦り合わせに多くの時間を費やすのが一般的だ。これに対して、吉田氏が統合的に把握し、判断できたのが、推進に大きく寄与した。生成AIの利用ルールの策定でも、グループ横断でのITガバナンスや情報セキュリティの知識が欠かせなかった。

階層別の研修で利用定着、現場担当も登壇

 多くの利用企業で生成AIを導入した後の利用喚起が課題となっている。こうしたなかでイオンではなぜ、1人当たりの利用を増やすことができているのか。1つの鍵を握るのが、適切なレベルの人材育成である。


 生成AIの導入前にAIリテラシーについて聞いてみたところ、およそ6割が初級者、上級者は6%程度だった。そこで、Exa Enterprise AIとともに、生成AIの上級、中級、初級の3段階の研修メニューを作成し、2024年1月〜3月までで計7回開催している。定期的な開催を通じて利用促進とリテラシー強化の両面を目的としている。

 エクサウィザーズで生成AIの研修を担当する千葉菜央は、「一般的な生成AIやexaBase 生成AIの研修に加えて、生成AIを実際に活用している現場の方に講師として出ていただける。この点が興味や参加目的につながっている」と言う。

写真 イオンICT担当の江頭氏。イオンデジタルアカデミーをベースにしたデジタル活用の促進を担当する

 イオン ICT担当の江頭陽介氏は、「Exa Enterprise AIに上級、中級、初級で研修をしていこうと提案いただいて実施したが、受講者が着実にステップを上がっていっている。満足度も高く、生成AIに精通する人も増えている。受講者が、イオンデジタルアカデミーにおいて、生成AIの教育コンテンツの登壇者になるなどの効果もでている」と評価する。

当初から各業務に根ざして活用

 単に生成AIを利用するだけでなく、業務に浸透しているのもイオンにおける活用の特徴だ。

図 生成AIの利用用途(出所:イオンデジタルアカデミー)

 実際に利用者が入力しているプロンプトをベースに調べてみたところ、店舗のオペレーションや人事から、商品開発や市場調査、カスタマーサポートまで幅広く使われているのがわかった。また、VBAやPythonのコーディングなどにも使われている。

 利用者のレベルにあわせた具体的な活用シーンを想定した研修が寄与している。「利用者の状況を見ると、極めて普段の業務に馴染みはじめている。研修の成果によって、生成AIに情報を聞くような使い方にとどまらず、翻訳、アジェンダや雛形の文書の作成など、業務における情報の生成に活用している」(江頭氏)

 エクサウィザーズでexaBase 生成AIのカスタマーサクセスを担当する駒谷徹は、「生成AIでは期待値の調整も重要となっている。個別のユーザーでは、文章案の作成などで着実な成果を出していることも、継続的な利用に繋がっている」と話す。

図 イオンデジタルアカデミー独自の「コミュニケーション掲示板」。生成AIの特設ページで情報を提供している

 イオンデジタルアカデミーにおける利用者同士における、現場での活用情報の交換も活発だ。ユーザーインターフェースはイオンデジタルアカデミー専用のものとしており、今回新たに策定した生成AIの利用ルールや、情報交換ができる「コミュニケーション掲示板」にもアクセスできるようにしている。研修で学んだ内容を意見交換するコミュニティの場としても機能している。 いい事例だけでなく、失敗談も共有されている。

 生成AIの活用で困った際に、まずは自身やユーザー同士で解決することを推奨しているのだ。現在も1000名規模と利用者が大きく、今後も拡大していくことを考えると欠かせない仕組みだ。また、生成AIサービス利用希望者は、事前に利用ルールの確認を必須としている。個人情報や機密情報の取り扱い、外部への情報発信に対する注意点などが整理されている。

 また、全体の約3割が非アクティブなユーザーであることが、利用率の調査からわかってきた。そこで、対象のユーザーに連絡し、新たな利用希望者にIDを移行させるという取り組みも行なっている。地道な取り組みではあるが、利用者同士の情報交換による活性化も重視しているため、欠かせない。

データ連携で重要業務文書を即入手、グループ共通の課題にも対処

 イオングループにおける導入でも、このデータ連携機能を活用し、成果を出し始めている。

 規則・規定類など、さまざまな種類の膨大な量の社内ドキュメントを管理しておき、逐次参照する必要がある。これまでは調べたい項目に関係する文書を見つけるのに大きな工数をかけていたが、exaBase 生成AIのデータ連携を活用することで、状況が一変した。

 それらの書類を読み込ませておくことで、生成AIのプロンプトからキーワードで一発検索できるようになったのだ。文書へのリンクも表示される。検索した結果を要約したり、整理しなおしたりすることも、生成AIに依頼できる。江頭氏は「exaBase 生成AIのデータ連携機能は、ファイルのアップロードが容易で、データの管理もしやすい」と評価する。

 江頭氏は、「データ連携機能の活用は、その会社の業務工数を大幅に削減しただけでなく、こうした社内外文書の効率的な整理・活用がグループ共通の課題であることがわかった。今回の生成AI導入で、開始から3カ月という早期にそうした隠れた課題が見えてきた」と言う。

 例えば、グループ内に同様の規則・規定などのドキュメントの運用を必要とする企業が多くあり、活用が進んでいる企業や部門、個人の取り組みを横展開することで、業務効率が大幅に改善する可能性がある。

成果を継続し、より多くの現場で容易に使えるように

写真 右からイオンの江頭氏、吉田氏、エクサウィザーズの駒谷、千葉

 「生成AIというものに対し、我々のグループでどのようなニーズがあるのかがわかった。さらに、我々が社内で保有しているデータをどう活用して、価値を出していくのかを考えるいいきっかけとなった」(吉田氏)

 今回のexaBase 生成AIの導入は「イオングループ全体におけるお試し」との位置付けであるが、各現場の業務に根ざした極めて本格的なものと言える。経営的な側面で課題となっていた具体的な効果についても、利用ニーズや業務の削減効果が見えてきた。

 前述の通り、活用のトップユーザーが多かった人事部では、翻訳、文章レビュー、アイデア出しのほか、コード生成にも活用。人事部全体で月130時間もの業務削減につながった試算できるという。

 グループ全体での本格活用を視野に入れ、実務に即したプロンプト活用の道筋が見えてきた。江頭氏は、「活用しているログデータをもとにして、営業やマーケティングなど分野ごとの優れたプロンプトを磨き上げ、活用に向けてグループ内へと展開していきたい。また、プロンプトをシステムに実装することで、生成AIサービスの操作に慣れていない人も質問なしに活用できるようにもしたい。こうした環境の構築や提案という面でエクサウィザーズグループのお力を今後もお借りしたい」と語る。

 イオンはグループ各社の従業員が現場で真に使える環境を用意したことで、生成AIを真に活用する次のステップをクリアに浮かび上がらせることに成功したと言える。今後、どのように実現していくのか。流通業界のみならず、日本のあらゆる生成AI活用企業が注目している。

 

Member

  • 駒谷 徹
    駒谷 徹
    株式会社Exa Enterprise AI
    exaBase生成AI事業開発部
    カスタマーサクセスグループ
    グループリーダー
  • 千葉 菜央
    千葉 菜央
    株式会社Exa Enterprise AI
    exaBase生成AI事業開発部
    カスタマーサクセスグループ
※記事中の役職名は取材当時のもの
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