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【イベントレポート・前編】『金融AX戦略』書籍出版記念セミナー 〜片山さつき財務大臣が祝辞、金融12社への取材から見えた「点のAI活用から面のAXへ」の道筋〜

公開日
2026.09.18
更新日
2026.09.25
【イベントレポート・前編】『金融AX戦略』書籍出版記念セミナー 〜片山さつき財務大臣が祝辞、金融12社への取材から見えた「点のAI活用から面のAXへ」の道筋〜

2026年9月17日、株式会社エクサウィザーズは、書籍『金融AX戦略―経営変革を導くAI実装の事例と実務』(金融財政事情研究会、9月18日発刊)の出版を記念した特別セミナー&交流会を、東京・日本橋兜町のKABUTO ONE HALL & CONFERENCEにて開催しました。

本書は、当社常務取締役COOの大植択真と金融法人部長の小山貴大が、三井住友フィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループをはじめとする国内主要金融機関12社の経営層・実務責任者への取材をもとに、AIを活用した金融業界変革の実践的手法をまとめた一冊です。

当日は、金融機関の経営層や企画・DX推進部門の担当者が多数来場。片山さつき財務大臣からのビデオメッセージ上映や、SMBC日興証券・三井住友ファイナンス&リースのAX推進責任者によるパネルディスカッションなど、金融AXの「今」を凝縮したプログラムが展開されました。

前編となる本レポートでは、開会挨拶、著者による書籍紹介、そして片山財務大臣からのメッセージの模様をお届けします。

写真:会場全景
写真:会場全景

開会挨拶:「現場の声を集めることが、私たち自身の学びだった」

セミナーの冒頭、エクサウィザーズ代表取締役社長CEOの春田真が登壇し、本書に込めた想いを語りました。

春田は、書籍の企画にあたり「アカデミックにAI活用を論じるのではなく、実際の現場の皆様の声を集め、世の中がどんな方向に進んでいるのかがダイレクトに伝わる形にしたかった」と説明。12の金融機関への直接取材を通じて、「『そういうことも起こるのか』『そこまで考えておられたのか』という新しい発見が数多くあり、声を集めること自体が私たち自身にとって大きな学びの時間だった」と振り返りました。

また、この半年でAIエージェントが急速に浸透し、特に開発の分野では「エンジニアが自分でコードを書いていたこと自体が信じられない、というレベルまで変化が進んだ」と指摘。一方で、業務のあり方そのものの変革はこれからだとし、次のように呼びかけました。

「私たち自身も変わらなければいけないし、業界も変わっていく。皆様の仕事がどんどん変わっていく過程の中で、『こういうことはできないのか』という現場の声をぜひダイレクトにお寄せいただきたい。ともに歩んでいければと思っています」

写真:春田の登壇の様子
写真:春田の登壇の様子

書籍紹介:「点」のAI活用から「面」のAXへ

続いて、著者であるエクサウィザーズ金融法人部長 兼 エクサフォワード九州 代表取締役の小山貴大が、本書のエッセンスを3つのポイントから解説しました。小山自身も銀行出身であり、「金融機関の皆様の課題と取り組みを書籍という形にできたことは感慨深い」と語ります。

AI前提で業務プロセス全体を再設計する

小山はまず、金融機関における生成AI活用が「点」の取り組みとして着実に浸透してきた現状を評価しつつ、今後の焦点は「面」への転換にあると指摘しました。人間中心の業務プロセスの一部分にAIを組み込むだけでは効果は限定的であり、「AI前提で業務プロセス全体を再設計する」ことが必要になるといいます。

その上で、取材・執筆を通じて見えてきた「3つの壁」を提示しました。

  1. レガシーへの経営資源の固定化:IT予算の7~8割が既存システムの維持・運営に費やされ、新しい取り組みに振り向けられる資源が限られている
    (出典:一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査報告書2025」)
  2. 技術の担い手が社外にいる:日本のIT人材の約7割はベンダー企業に所属しており、発注はできても、自ら設計し作り変える担い手が社内に不足している
    (出典:独立行政法人情報処理推進機構「DX白書2023」)
  3. 確率的に振る舞う技術のコントロール:「決められた通りに動く」前提から、「たまに間違えることがある」前提へ、ガバナンスと組織運営の切り替えが求められる

小山は「これらの壁は、現場の頑張りだけで乗り越えられるものではありません。予算配分、人の配置、どこまでAIに任せるかの設計――いずれも経営が積極的に関わるべき論点です」と強調しました。

12社への取材から見えた共通項

本書の中核となる第2章では、銀行・証券・保険・リースの業態を横断した12社へのインタビューを収録。小山は、業態が異なっても浮かび上がる3つの共通項を紹介しました。

1つ目は、AIを「人」として扱う表現の広がりです。ふくおかフィナンシャルグループはAIエージェントを「優秀なデジタル従業員」と表現し、千葉銀行は次期中期経営計画で「AIも行員とみなして協働する」方針を掲げ、三井住友フィナンシャルグループでは社長の発言や性格診断をAIに学習させた「AI CEO」を社内公開しています。「道具ではなく、人そのものを指す表現がAIに使われ始めている。そうなると、何をどこまで任せ、結果の責任をどう負うのかも含めて、業務そのものを設計し直す必要が出てくる」と小山は指摘します。

2つ目は、現場定着を担う「人」の存在です。みずほフィナンシャルグループの「DX Lead」、三菱UFJフィナンシャル・グループの「AIチャンピオン」、横浜銀行の「ITアンバサダー」など、各社が現場業務を深く理解した推進人材の確保・育成を鍵に据えていました。

3つ目は、内製と外部活用の考え方の変化です。「何を蓄積し、どう管理し、どう改善するかという領域は内部以外にない」(SMBC日興証券)、「パートナー選定で特に重視しているのは人」(ふくおかフィナンシャルグループ)といった声を紹介し、「内製か外注かの二択ではなく、どの判断を自社に残し、外部企業とどのような関係を結ぶかへと、考え方自体が変わってきている」と分析しました。

5年後の競争力を決めるのは「蓄積」

最後に小山は、AGIが現実味を帯びる時代の展望を提示しました。情報処理能力が誰でも手に入るコモディティになっても、「AIの出力を決めるのはAIそのものではなく、そこに何を入力するか。そのためにどんな判断と情報を蓄積してきたか」であり、各社の差はむしろ開いていくと述べます。

「独自のインプットは外部から調達できず、過去に遡って作ることもできません。時間をかけて蓄積することでしか手に入らないものこそが、今後の差別化と競争力の源泉になる。これこそが、AXに今すぐ着手すべき理由です」

写真:小山登壇の様子
写真:小山登壇の様子

特別メッセージ:片山さつき財務大臣「AIがいよいよ『財布』を持とうとしている」

書籍紹介に続き、片山さつき財務大臣兼金融担当大臣からのビデオメッセージが上映されました。

片山大臣は本書の刊行に祝意を示した上で、「AIは単なる業務効率化の手段にとどまらず、金融サービスの提供方法や金融機関のビジネスモデルを大きく変える可能性を持っている」と指摘。AIエージェントが自律的に商品を探し、比較し、決済まで担う時代の到来を見据え、次のように述べました。

「いわば、これまで頭脳だけであったAIが、いよいよ『財布』を持とうとしているわけです。こうした技術の進展の下では、誰の責任で何を行ったのかを検証するなど、『守り』の対応が一層重要となります」

さらに、政府が「成長投資を促進するための金融戦略」に「AI時代を見据えたオンチェーン金融イニシアティブ」を盛り込んだことに触れ、金融分野におけるAIの健全な利活用の促進と、市場・金融機関の監督のあり方について検討を深めていく方針を示しました。

金融行政のトップからの力強いメッセージに、会場の参加者は熱心に耳を傾けていました。

写真:片山さつき大臣ビデオメッセージ上映の様子
写真:片山さつき大臣ビデオメッセージ上映の様子

後編のご案内

後編では、本イベントのメインコンテンツである、三井住友ファイナンス&リース 理事 デジタル推進本部長 川名洋平氏、SMBC日興証券 デジタル戦略部長 佐々木有香氏、モデレーター・大植択真(エクサウィザーズ常務取締役COO)によるパネルディスカッション「『点』のAI活用から『面』のAXへ―経営変革を導くAI実装の現場から」の模様を詳しくお届けします。どうぞご期待ください。

▶︎書籍『金融AX戦略―経営変革を導くAI実装の事例と実務』(金融財政事情研究会)
全国の書店・Amazonにて発売中
https://amzn.asia/d/08UPMRiI

▶︎次回イベントのご案内
AI INNOVATORS FORUM 2026 〜覚悟と熱意〜
開催日:2026年10月14日(水)
会場:浜松町コンベンションホール
形式:ハイブリッド開催(現地/オンライン)
イベント特設サイト:https://event-lp.exawizards.com/hybrid/

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