グーグル、法務特化AI「Gemini Enterprise for Legal」を投入 OpenAI・Anthropicと真っ向勝負
Google Cloudは8月25日、法律実務に特化したAIサービス「Gemini Enterprise for Legal」を発表した。現時点ではプレビュー提供。企業向け基盤「Gemini Enterprise」の上に業種別の機能を載せた最初のパッケージで、金融サービス向けと同時に発表された。
構成は四つ。弁護士業務向けの「スキル」、法務システムとの接続機能、外部企業のAIエージェント、そして基盤となるGemini Enterpriseそのもの。スキルは準備書面の起草、引用文献の検証、契約ライフサイクル管理、規制動向の自動監視、本人からの個人データ開示請求への対応などを想定する。
接続先には、AIと外部システムをつなぐ規格MCPを通じて、カナダの情報サービス大手Thomson Reuters、文書管理のiManageとNetDocuments、証拠開示のRelativityOneとEverlaw、電子署名のDocusign、米法務AI企業Harvey、スウェーデンの法務AI企業Legora、判例データベースCourtListenerなどが並ぶ。導入支援にはAccenture、Deloitte、KPMGといったコンサルティング各社も加わった。
Google CloudのThomas Kurian最高経営責任者(CEO)は「エージェント型AIによって、法律家は過去の判例を横断的に調べ、複雑な論証を組み立て、単調な作業を自動化できる。ただし、その一連の流れが正確で、事実に基づき、法的な根拠に裏打ちされていることが決定的に重要だ」と述べた。
守秘性の設計も前面に出した。顧客データやプロンプト、出力は組織のプライベートクラウド内にとどまり、基盤モデルの学習には使わない。コネクター経由で既存のアクセス権限をそのまま引き継ぐため、利益相反を防ぐ事務所内のアクセス制限も自動的に反映される。調査結果はモデルの学習データではなく一次法源に基づくとする。
先行導入したのは米法律事務所Cleary Gottlieb、英法律事務所Freshfields、米法律事務所Weil Gotshal & Manges、米法律事務所Williams & Connollyの4事務所。ClearyのマネージングパートナーJeff Karpf氏は「日々使う他のツールとそのまま噛み合う」点を評価。FreshfieldsのグローバルマネージングパートナーAlan Mason氏は、Google Cloudとの複数年にわたる戦略的提携だと説明した。
法務分野は今年に入って主要AI企業の激戦区になっている。Anthropicは5月12日に「Claude for Legal」を投入し、12の実務分野別プラグインと20を超える外部接続を一挙に公開した。OpenAIも法務向けの縦割り製品を準備中と伝えられている。Microsoftも法務エージェントを抱え、PalantirやPerplexityもこの市場を狙う。
興味深いのは、陣営の線引きがはっきりしないことだ。HarveyやLegora、Thomson ReutersはAnthropicとGoogleの双方につながっている。Freshfieldsも5月時点でClaudeを実案件に導入した事務所として名前が挙がっていた。法律事務所も法務テック企業も、当面は一社に賭けない構えを見せている。
主なソース