「AIの方が効率的でも、若手を雇い育てるべきだ」 OpenAI研究者が提言
米OpenAIでAIの安全性を研究するハーバード大学教授のBoaz Barak氏は10月24日、Xへの投稿で「人間が主導権を持つ未来を望むなら、短期的な効率を犠牲にしてでも若手を採用し、育成する必要がある」と述べた。
同氏は続けて、「人間が主導権を持つ未来には、長期的な効率を犠牲にしてでも実現する価値がある」と投稿した。
「スタッフ20人よりAI」が議論の発端
議論の発端は、元米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長でハーバード大学教授のJason Furman氏の発言だった。大統領に経済政策を助言するCEAを今率いるとして、博士号を持つ人や取得を目指す人からなるスタッフ20人と、現在のAIシステムのどちらかを選ぶなら、残念ながらAIを選ぶと、10月23日付のニュースサイトAxiosの取材記事で述べた。
同氏は、会議への出席や報道機関、議会への対応には人間が必要だと説明した。その一方で、CEAの業務の大きな部分を占める分析などでは、AIの方が速く、信頼できると評価した。
これに対し、経済学者のClaudia Sahm氏は、スタッフが後に果たした役割を挙げて反論した。同氏によると、当時のスタッフは財政政策を分析するYale Budget Labの設立や、財務省での経済政策、後の政権での仕事、貿易・環境・税制などの研究を担うようになった。「その『20人のスタッフ』が、こうした人材になった。AIモデルにはできないことだ」と述べた。
Furman氏も、この指摘にはおおむね同意すると応じた。研究者は仕事を手伝ってもらう必要が薄れても、指導のために研究助手を雇い続けるだろうと説明した。企業についても、人手としての必要性が薄れても、将来の役割に備えて若手を採用・育成するとの見方を示した。Barak氏の最初の投稿は、この発言を引用したものだった。
競争する企業は、育成の負担を引き受けられるか
人間の主導権を保つために長期的な効率も犠牲にするというBarak氏の主張に対し、Furman氏は賛同しながらも、実現する仕組みは明確でないと指摘した。営利企業は利益を追求しなければ競争に負ける。将来の利益につながる人材育成には取り組んでも、それだけでは必要な育成が十分に行われない可能性があると説明した。
同氏は、アルツハイマー病の治療を目指す研究所の例も挙げた。人材育成に長期的な効果があっても、資金提供者が求めているのは治療法の実現だと指摘し、人間の育成や関与をどこまで優先するかという問題を提起した。
Barak氏は、仕組みが明確でないことを認め、人間の主導権を維持するために負担するコストを「human tax」と表現した。その負担の重さは分野や状況によって異なるとしたうえで、例えばアルツハイマー病の治療法の実現を50年遅らせるほどではなくても、一定の負担を引き受けるべきだという合意をつくりたいと述べた。