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「脱落」から4週間で首位 Googleは最先端に戻ったのか

「脱落」から4週間で首位 Googleは最先端に戻ったのか

「2025年12月からずっと蚊帳の外だったのに、どうやら戻ってきたらしい。驚きだ」。AI研究者でニュースレター「Interconnects」を発行するNathan Lambert氏は10月28日、Xにこう書き込んだ。米Google傘下のAI研究組織Google DeepMindが、新しい最先端モデル「Gemini 4 Carbon」を発表した直後のことだ。

 

Carbonは、AIモデル評価会社の米Artificial Analysisが複数の試験結果をまとめた総合指数で、59点の首位に立った。4週間前の9月30日に発表した前モデル「Argon」は、当時の同社の評価で53点にとどまり、米Anthropicの「Claude Opus 5.5」の58点に届かなかった。AI新聞も10月12日の記事で、Googleは計算資源をライバルに売るほうが儲かるため、米OpenAIやAnthropicに追いつけないと書いた。その見立ては外れたのか。

成績では戻った、実力はまだ見えない

Argonの一般提供は10月13日に始まり、Carbonはその15日後に登場した。GoogleのSundar Pichai CEOは10月28日の決算発表で、「Gemini 4のArgonとCarbonは今、最前線で先頭に立っている」と宣言した。

 

試験の成績で見る限り、Googleが先頭集団に戻ったのは確かだ。Carbonが首位に立った総合指数は、Artificial Analysisが発表前日の10月27日に作り直したばかりだが、物差しがGoogleに有利に変わったわけではない。旧指数でOpenAIの「GPT-6 Astra」と同じ53点だったArgonは、新指数では50点に下がり、Astraは57点に上がった。その物差しで、Carbonの59点、Opus 5.5の58点、Astraの57点と、上位3モデルが2点の中に並んだ。

 

弱点とされたコーディングも伸びた。10月12日の記事では、半導体・AIインフラ調査会社の米SemiAnalysisで技術スタッフを務めるJordan Nanos氏の「3位以下のコーディングモデルなど、誰も欲しがらない」という発言を紹介した。Carbonは、AIがプログラミングを自律的に進める力を測る指数でArgonから6点伸ばし、AnthropicのプログラミングAI「Claude Code」でOpus 5.5を動かした場合に次ぐ2位に入った。

 

ただ、試験の成績がそのまま実力を表すとは限らない。Argonの発表時には、試験の成績は良いのに、社員が実際の仕事に使うとコーディングでつまずくとブルームバーグ通信が報じた。Googleは否定したが、Carbonで同じ食い違いが起きていないかを確かめる手段は、外部にはまだない。Carbonを使えるのは、Googleが選んだ一部のサイバー防御の担当者だけで、一般への提供は「できるだけ早く」とするのみだ。Lambert氏も「使えないなら、スコアを発表しないでほしい」と不満を漏らした。

外れた見立て、残った見立て

残ったのは、計算資源を外に売るという見立てだ。この路線は弱まるどころか加速している。Google Cloudの7〜9月期の売上高は前年同期の2倍を超える307億ドルに達し、4〜6月期の82%増から伸びがさらに高まった。10月27日には米データベース・クラウド大手のOracleが、Google以外の大手クラウドとして初めて、TPU(Google製のAI用半導体)を2027年から提供すると発表した。ほぼ同じころ、OpenAIがTPUの購入を計画しているとブルームバーグ通信などが報じた。

 

外れたのは、「売るか、勝つか」の二者択一という前提だ。SemiAnalysis創業者兼CEOのDylan Patel氏は、Googleが自社モデルに回す計算資源の割合は2〜3年前より低いと指摘し、AI新聞もこれを脱落論の根拠の一つとした。これに対しPichai氏は10月20日公開のポッドキャストで、最先端モデル向けの計算資源の確保は「譲れない」と述べ、そのためにGoogle Cloudは今も短期的な売上を見送っていると語った(AI新聞10月21日の記事)。Carbonは、計算資源を外に売りながらでも最先端に戻れることを示した。

脱落論の行方

10月12日の記事では、物理学者でポッドキャスト「Moonshots」の共同ホストを務めるAlexander Wissner-Gross氏の、Googleは最先端の開発競争に勝てていないという発言も紹介した。だが同氏は自身のニュースレターで、最先端の競争は再びGoogleを含む3社の争いになったと書いている。発言を修正した形だ。一方で、脱落論の急先鋒だったSemiAnalysisのPatel氏は、本稿執筆時点でCarbonについて何も発信していない。

 

脱落論は、少なくとも試験の成績の上では外れた。ただ最先端に戻ったと言い切れるかは、Carbonが一般に公開され、実務で力を示せるかどうかにかかっている。またSemiAnalysisのPatel氏がCarbonをどう評価するのかも注目したいところだ。

著者
湯川鶴章

AI新聞 編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『生成AIで心が折れた』(2025年)、『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。