AIがAIを作る時代、2027年夏にも 第三者評価会社がAnthropicの到達時期を予測
AIモデルの性能を第三者として評価する米Vals AIの共同創業者兼CEO、Rayan Krishnan氏は10月26日公開のインタビューで、米Anthropicが2027年7〜8月に「完全なRSI(再帰的自己改善)」に到達するとの予測を示した。
RSIとは、AIが自分より高性能なAIを開発し、そのAIがさらに次のAIを開発する循環のことだ。実現すれば、これまで人間の研究者が主導してきたAI開発をAI自身が担うようになり、AIの進化が大きく加速する可能性がある。
今回の予測が注目されるのは、AI研究者の仕事をAIがどこまで実行できるかという測定結果に基づいていることだ。
AI研究者の仕事をAIにやらせて測定
Vals AIが公開している「RSI Index」は、AIが次のAIを開発する能力をどこまで身につけたかを測る指標だ。
AI開発に必要な仕事から4種類の課題を選び、AIモデルに実際に取り組ませる。例えば、小型の言語モデルの学習方法を改良して性能を高める、既存のAIモデルを追加学習で賢くする、別のAIの性能を正しく評価する仕組みを作る、といった仕事だ。
単にAI研究の知識を試すのではない。AI自身に実験を計画・実行させ、その成果を採点する。
10月15日更新の公式ランキングでは、Anthropicの「Claude Opus 5.5」が総合指数0.37で首位となり、上位3モデルをClaudeが占めている。Opus 5.5は言語モデルの学習方法を改良する課題で、過去に人間の研究者が発表した成果を上回った。
ただし、4種類の課題すべてで人間の優秀な研究者に匹敵する成果を出せているわけではない。現在のAIは、次のAIを開発する仕事の一部では高い能力を示しているものの、研究全体を任せられる段階にはまだ達していない。
改善傾向から2027年7〜8月と予測
Krishnan氏によると、RSI Indexで測定したAIの研究能力は、過去1年間ほぼ一定のペースで改善している。
同氏はインタビューで、Anthropicについて次のように述べた。
「Anthropicは2027年7月か8月頃に完全なRSIに到達しそうだ」
半年前に同じように予測した際も、到達時期は2027年6〜7月頃だったという。つまり、最近になって突然予測を前倒ししたのではなく、継続的な性能向上からほぼ同じ時期が示されている。
しかも、Vals AIが測定しているのは、一般公開を前提としたモデルだけだ。AI研究を自動化するために特別に訓練されたモデルや、複数のAIが協力して研究する高度なシステムは評価に含まれていない。
そのため、実際の開発現場では、公開されている測定結果よりも研究の自動化が進んでいる可能性がある。
一方、RSI IndexはAI研究に必要な仕事の一部を測るもので、次世代モデルの開発全体を再現しているわけではない。2027年夏という時期も、これまでの改善傾向を延長した予測であり、実現が確実になったという意味ではない。
Anthropic共同創業者も2027年に予測を前倒し
興味深いのは、Anthropicの共同創業者も同じ2027年を予測していることだ。
同社共同創業者のJack Clark氏は5月時点では、人間の介入なしにAIが次のAIを開発できるようになる確率を、2027年までなら30%程度、2028年末までなら約60%と見積もっていた。
ところが10月12日のニュースレターでは、「完全な再帰的自己改良が2027年に可能になる公算が大きいと、今は考えている」と予測を前倒しした。
判断を変えた理由は、AIが数学分野で新しい発見を生み出す能力を示し始めたことや、研究の実験結果を分析して次に何を試すかを判断する能力が急速に向上していることだ。
Anthropic自身の開発現場でも、AIの役割は広がっている。同社の上場申請書類によると、2026年9月には社内のコードベースに追加されたコードの9割超をClaudeが書いていた。AIは次世代モデルの研究、学習、検証にも関わっている。
開発企業の共同創業者による予測と、第三者評価会社による測定結果からの予測が、ともに2027年を指している。
AIの進化が加速する時代へ
RSIが実現すると、何が変わるのか。
これまでは人間の研究者が新しい学習方法を考え、実験を繰り返し、その成果を次のAIモデルに反映してきた。RSIが実現すれば、この一連の仕事をAI自身が担えるようになる。
そして、より高性能になったAIが次のAIを開発する。そのAIは、さらに優れたAIを開発する能力を持つかもしれない。こうした循環が始まれば、AIの進化は人間の研究者だけに頼る場合よりも速くなる可能性がある。
Krishnan氏は、RSI実現後について「モデルの進歩は加速し、人間がモデルを理解しにくい領域にまで進む可能性がある」と述べている。
AI開発への人間の関与が減れば、AIの知能がどのように生まれるのかを、人間が十分に理解できなくなる可能性があるということだ。
もちろん、AIが自ら研究できるようになっても、半導体や電力などの制約がなくなるわけではない。進化がどこまで加速するかは、まだ分からない。
それでも、AIが次のAIを開発し、そのAIがさらに次のAIを生み出す時代が、早ければ来年夏にも始まるかもしれない。AIの進化を主導する役割が、人間からAI自身へと移り始める。その転換点が目前に迫っているという予測だ。