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SpaceX、1年半で13GWのAIインフラ建設へ 世界最大のAIクラウドを目指す

SpaceX、1年半で13GWのAIインフラ建設へ 世界最大のAIクラウドを目指す

米半導体・AIインフラ調査会社SemiAnalysisは11月3日、Elon Musk氏が率いる米宇宙開発企業SpaceXが、2027年中に約13GW(1300万kW)のデータセンター容量を整備し、世界最大のAIクラウド事業者になる可能性があると報告した。ただ、米国ではデータセンター建設への反対が広がっており、11月3日の中間選挙の結果を受け、計画の実現には不透明な部分も出てきた。

13GWという規模は、米Googleが1999年から2026年までの約27年間に整備してきたデータセンターの総容量に匹敵するという。SpaceXはこれをわずか1年半で実現しようとしている。GWはデータセンターの電力容量を表す単位で、AIの計算速度そのものを示す数字ではない。

SemiAnalysisによると、SpaceXは当初、2027年に10GWの容量を確保する計画だったが、目標を約13GWに引き上げた。同社が追跡する建設現場では、すでに3.6GW分の施設が建設中で、9GWを超える容量について建設候補地などを特定している。

SemiAnalysisは「We think it’s possible and have already identified >9GW of capacity.(実現可能だと考えている。すでに9GWを超える容量を特定している)」と述べ、目標の達成は現実的だとの見方を示した。

5カ月で建設したデータセンターも

建設の中心となっているのは、米テネシー州メンフィス周辺からミシシッピ州にまたがる巨大AIデータセンター「Colossus 2」だ。SemiAnalysisによると、同施設では1年足らずで約2GWの容量が追加される見通しだ。関連施設「MiniHard」の建設には約5カ月しかかからず、新たに取得したミシシッピ州の建設用地では約4カ月での完成を目指している。

SpaceXは宇宙開発事業の施設もAIインフラに転用している。テキサス州のロケット開発・打ち上げ拠点「Starbase」では、2つのデータセンターの建設が進んでおり、SemiAnalysisは合計容量が1GWを大きく超える可能性があるとみている。さらに、同州で計画する半導体製造施設「TeraFab」にもデータセンターが併設される可能性を指摘した。

急速な建設を支えるのが、電力設備の独自調達と建設期間の短縮だ。SpaceXは送電網への接続だけに頼らず、ガスタービンによる自家発電や大規模蓄電池を組み合わせている。Colossus 2では5.9GWhの蓄電設備の設置が進んでいるという。

中間選挙でデータセンター規制が争点に

ただし、SpaceXの計画には政治的な不確実性もある。11月3日の米中間選挙では、各地でデータセンター建設の規制が争点となった。米選挙情報サイトBallotpediaによると、同日のデータセンター関連の地方住民投票41件のうち40件で、建設制限を支持する方向の結果となった。これには建設禁止や一時停止の承認だけでなく、開発促進案の否決なども含まれる。

SpaceXが施設を建設しているテキサス州では、データセンターの新規承認停止を公約に掲げた民主党のGina Hinojosa氏が知事選に勝利した。同氏は10月22日、住民を保護する法律が州議会で成立するまで、データセンターの承認を停止すると表明していた。

テキサス州では、現職の共和党知事Greg Abbott氏も8月から電力網への接続審査を停止し、9月には環境関連の許認可も凍結している。Hinojosa氏が2027年1月に就任した後も規制が続けば、新たな許可を必要とする建設計画が遅れる可能性がある。

SemiAnalysis自身も11月1日付の別の記事で、テキサス州の許認可停止が長期化することを、米国のデータセンター建設計画にとって最大のリスクと位置づけていた。同社は、2027年に稼働予定の施設の多くはすでに建設中のため影響が限定的とみる一方、未着工の施設が多い2028年の計画には大きな影響が及ぶ可能性を指摘している。

SpaceXの建設計画についても、すでに着工している施設と、追加の許認可を必要とする施設では影響が異なる。SemiAnalysisは、TeraFabの建設予定地について、許認可の状況次第ではテキサス州の規制対象になる可能性を指摘している。

さらに、電力供給にも課題が残る。SemiAnalysisの分析では、SpaceXが計画するデータセンターの容量に対し、確保できる電力が不足する可能性がある。

それでも同社は「SpaceX may be the fastest datacenter builder in the world(SpaceXは世界で最も建設速度の速いデータセンター事業者かもしれない)」と評価している。

世界のAI開発競争では、AIモデルの性能だけでなく、それを動かす巨大なデータセンターをどれだけ速く建設できるかが重要になっている。一方、電力や水の消費、住民の反対、政治的な規制が、建設速度を左右する要因になりつつある。

著者
湯川鶴章

AI新聞 編集長

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『生成AIで心が折れた』(2025年)、『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。