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全社のDXを牽引するデジタル企画人材を育成
アイデア創出プログラムの4割がプロジェクト移行予定

2023年1月20日

協和キリン株式会社

協和醗酵工業が2008年にキリンファーマとの合併により、協和発酵キリン株式会社に商号変更。2019年に協和キリン株式会社に社名を変更した。2021-2025年中期経営計画において、「Life-changingな価値の継続的創出」実現のため「アンメット・メディカルニーズを満たす医薬品の提供」に向けた活動を行っている。

概要

overview

協和キリンは2021年に公表した中期経営計画で「高付加価値製品による競争力強化」を掲げた。この推進に向けてカギを握るのがデジタル技術の活用であり、デジタルで実現する会社のあるべき姿を「デジタルビジョン2030」として策定。デジタルビジョン実現に向けたデジタル人材の育成をエクサウィザーズとともに取り組んでいる。

課題

製薬事業のバリューチェーンを担当する全ての部門において、全社のデジタル人材を育成することが求められている。推進に向けて、必要とされる人材像の育成、評価や育成を支援するサービスの導入と運用の安定化も課題となっていた。

解決

エクサウィザーズと協働し、今後育成をしていくべきデジタル人材像の定義および育成計画を策定した。業務上の課題を特定しデジタルを活用した解決策を立案できる人材を「DPP(デジタルプロジェクトプランナー)」と呼び、育成プログラムを設計。DX人材を評価したうえでeラーニングで育成するエクサウィザーズの「exaBase DXアセスメント&ラーニング」を活用した。

事例の紹介

協和キリンは2021年2月に公表した「2021-2025年 中期経営計画」で、「高付加価値製品による競争力強化」を掲げている。その推進力となるのが、現在日欧米を中心に展開しているグローバル戦略品の価値最大化である。そして次世代のグローバル品によってさらに成長を加速させる狙いだ。様々な分野で重要な医薬品候補が待ち構えている。

これらの推進に向けてカギを握るのがデジタル技術の活用であり、デジタルで実現する会社のあるべき姿を「デジタルビジョン2030」として策定した。

協和キリンはデジタルビジョン実現に向けたデジタル人材の育成をエクサウィザーズとともに取り組んでいる。デジタル人材育成の取り組み内容や見えてきた成果は何か。

協和キリン ICTソリューション部長の廣瀬拓生氏、同 DX推進グループマネジャー 高木真人氏、同 竹澤千秋氏と、エクサウィザーズからは、Care&Med Tech事業部長で執行役員の羽間康至、同事業部の木股瑠惟、DX人材育成事業部の上峠隆行が、取り組みを振り返った。

「デジタルビジョン2030策定に向け、当社の経営層でワークショップを実施したところ、デジタル技術活用を支えるデータ基盤を作ることに加えて、デジタル技術を活用していく人材を社内に育てていくべきだという共通認識を持っていることがはっきりした。また、全社員を対象にした意識調査アンケートを実施したところ、ほぼすべての人が『デジタルが重要』と回答しており、半数以上が『DX/ITについて勉強したい/している』と回答をした。このことから、社員側のデジタルリテラシー獲得に対するニーズがあることもはっきりした」

協和キリン ICTソリューション部の廣瀬拓生部長はこう力をこめて語る。

協和キリン ICTソリューション部の廣瀬拓生部長

製薬バリューチェーン全部門でDX人材を

廣瀬部長が特に重視するのが、製薬事業のバリューチェーンを担当する全ての部門における全社のデジタル人材の育成だ。「社内のDX推進の速度を引き上げるには、各部門に核となるデジタル人材を育成し、横連携を実現していく必要がある」(廣瀬部長)

2021年末よりエクサウィザーズと協働し、今後育成をしていくべきデジタル人材像の定義および育成計画を策定した。なかでも、業務上の課題を特定しデジタルを活用した解決策を立案できる人材を「DPP(デジタルプロジェクトプランナー)」と呼び、育成プログラムを設計した。

エクサウィザーズは「exaBase DXアセスメント&ラーニング」というDX人材を評価したうえで、eラーニングで育成するサービスを提供している。また、AIやデータを活用したヘルスケア事業を実現するAI事業開発担当を多く擁しており、製薬業界での実績も多い。

エクサウィザーズCare&Med Tech事業部長で執行役員の羽間康至は「これまでの事業環境においては最適な人材・組織ケイパビリティだったのだとしても、外部環境の変化に伴って最適でなくなることは往々にしてある。そうした状況にも機動的に対応していける人材の発掘・育成・獲得がこれからの時代は欠かせない」と指摘する。

DPPの育成ジャーニー

DPPは初級、中級、上級の3段階を設定している。初級DPPになるには業務課題を発見して、デジタル技術を活用した解決アイデアを企画書に落とし込む力を身に着けることが求められる。そして企画書を基にして社内を巻き込みながらプロジェクトを実施できる力を身に着けることで中級となる。さらにプロジェクトを通じて成果を創出することで上級DPPとして認定される。

この初級DPPを育成する研修として「DPPブートキャンプ」を企画し、DPPブートキャンプの実行に際してもエクサウィザーズがパートナーとなっている。DPPブートキャンプは、開始前のアセスメント、DXリテラシーを学ぶe-ラーニング、業務課題を発見しデジタル技術を活用した解決策を企画するDXアイデア創出プログラム、そして修了時の再アセスメントからなり、第1回DPPブートキャンプは2022年3月~7月に開催し、営業本部・研究開発本部・生産本部・薬事部・人事部・ICTソリューション部より計15名が参加した。

DX人材のアセスツールで定量把握

DPPブートキャンプ開始時点・修了時のアセスメント、そしてDXリテラシーを学ぶeラーニングにおいて、exaBase DXアセスメント&ラーニングが重要な役割を果たす。

同サービスのアセスメント「デジタルイノベータアセスメント」では、Webで45分程度のテストを受けることで、デジタルとイノベーティブの2軸でスキルと素養を見える化する。現在はITやデジタルに関与していなくても、素養のスコアが高ければ「DXポテンシャル人材」と判断できる。eラーニングなどで一定の学習を実施することでDX人材に育成できる可能性が高い。

廣瀬部長は「デジタル人材について客観的な指標で把握し、それを継続的に使えないかと考えていた。自部門にてアセスメントを1回利用してみたところ、デジタルだけでなくイノベーションの要素も把握でき、これは当社でのデジタル人材の育成に使えるなと思った」と評価する。

exaBase DXアセスメント&ラーニングの画面。Webでの受検でDXを推進するスキルや素養を数値化できる。エクサウィザーズが開発・提供する。画面はオンラインで出題される問題(上)、必要スキルと現在のスキルの比較(中)、デジタルのスキルについてのスコアと他の受検者との比較(下)。表示しているデータはテスト用です(出所:エクサウィザーズ)

エクサウィザーズが同サービスを受検した4700人を分析したところ、全体で18%がDXポテンシャル人材(注)であることが分かった。そして、専門職(40%)や企画系職種(32%)に続いて、営業部門のDXポテンシャル人材の割合が24%と高い数値を示している。その母数も多い。

ここでエクサウィザーズが実施した本分析においてDXポテンシャル人材は「デジタル・素養」が7.4点以上かつ「イノベーティブ・素養」が6.9点以上の人材として定義している。(出典:エクサウィザーズ はたらくAI&DX研究所レポート DX人材はどこにいる? 社内に埋もれるDXポテンシャル人材をどう発見・育成するのか?

実際、協和キリンの社内でも営業部門におけるデジタル活用に向けた動きが活発だ。新型コロナウイルスの感染拡大で、従来型の営業スタイルが活用できなくなっているのも背景にある。デジタル手段でのハイブリッドな営業が求められ始めている。

「営業本部は組織としてデジタル推進室を置いて、本部内のデジタル化を組織的に実施し始めている。アナログからデジタルへのマーケティング活動の転換の先頭に立てるような企画人材の育成の一環として、全社でのDPPブートキャンプのプログラムを積極的に利用してもらっている。このように本部内での育成計画と全社でサポートする部分を組み合わせることで本部と全社の好循環が生まれ始めている」(廣瀬部長)

このほか営業本部内では、デジタル推進を表彰するDXアワードを実施するなどしているという。

DXアイデア創出プログラムの概要(出所:エクサウィザーズ)

DXリテラシーはe-ラーニングを通じて、AI・データサイエンスやソフトウェアエンジニアリングといった基礎的なデジタル知識を身に着けた後に実施するのは、DXアイデア創出プログラムである。

DXアイデア創出プログラムでは、各受講者が課題の発見・明確化、デジタル技術を活用した解決法の立案、費用対効果の試算、そして最終発表会として上長へのプレゼンテーションを実施する。これら全てのステップにおいて、エクサウィザーズのメンバーが各受講者のメンターとして伴走する。協和キリンのICTソリューション部DX推進グループの高木真人マネジャーは「自身も受講者として参加したが、メンターは製薬の業界や業務についての知見があり、DXについても先端の知見を持っていると感じた。実際にどう手を動かしていくのかもアドバイスいただけている」と評価する。

協和キリンのICTソリューション部DX推進グループの高木真人マネジャー

他の研修に比べて高いプロジェクト移行率

第1回のDPPブートキャンプのアイデア創出プログラムを通じて創出された15件のアイデアのうち、6件が、部門によるプロジェクト移行意志があった。「他のDXアイデア創出型の研修に比べると、プロジェクトへと移行する割合が非常に高いと感じている。また、メンターとのディスカッションを通じて、新たなプロジェクトが生まれたという声も聞いている。」(高木マネジャー)

協和キリンのICTソリューション部DX推進グループの竹澤千秋氏

今回のプログラムは協和キリン用に特別に組んだものである。エクサウィザーズ Care&Med Tech事業部の木股瑠惟は「エクサウィザーズでは製薬業界の各バリューチェーンの業務経験・知見をもつAI事業開発担当が所属している。受講者の方が発見する課題を適切に理解し解決策を考えられるよう、各受講者の所属部門の業務知見があるAI事業開発担当をメンターとしてアサインし、また、より良いフィードバックを行えるようメンター同士でもディスカッションを重ねるなど工夫した」と説明する。

実際、協和キリン ICTソリューション部DX推進グループの竹澤千秋氏は「通常業務を抱える中で課題の洗い出しから解決案まで時間をかけて検討することは難しい。DPPブートキャンプのDXアイデア創出プログラムでは、メンターに伴走いただきながら時間をかけて深く考え抜くことができた。そうした点がよかったという受講者の声があった」と評価する。

DPPブートキャンプDIAアセスメントの結果、イノベーティブスキルが実務レベルとされる10点満点中8.5点以上となった方は初回受験時15名中3名(20%)、2回目14名中6名(42.9%)いた。ICTソリューション部と経営企画部の一部メンバーにて受検した際には52名中6名(11.5%)であったことと比較しても、研修参加者のポテンシャルは高く、研修を通じて更にスキルの向上が見て取れたと言える。「参加者より『eラーニングやアイデア創出プログラムの課題は多くあったが、こなしていくことで、デジタル技術の知識を体系的に身に着け業務に適応出来た方や、短時間で人に伝えるというスキルを得た』という声もあった」(高木マネジャー)

(exaBase DXアセスメント&ラーニングを担当するエクサウィザーズの上峠はオンラインで参加した)

デジタル人材育成で部門間の壁をなくす

exaBase DXアセスメント&ラーニングのアセスメントは700社以上、3万5000人以上が受検しており、業界や部署ごとのスコアの平均値が算出されている。同サービスの開発・提供を担当するエクサウィザーズ DX人材育成事業部グループリーダーの上峠隆行は「アセスメントを利用することで、なりたい自分とのギャップを客観的かつ多角的に把握し、目標をもって埋めていくことができる」と説明する。

これに対して廣瀬部長は、「継続的にアセスメントを行うことで、スキルアップのモチベーションを維持していくことができる」と期待する。

デジタル人材像の定義・育成計画の策定、そしてDPPブートキャンプによる実践研修で、協和キリンにおけるデジタル推進が新たな段階に入ったようだ。今後、四半期ごとに実施される各本部のDX推進リーダーが参画するDX推進会議などを通じて、社内に成功事例を展開していく考えだ。

現在、新たな15名を対象に第2回DPPブートキャンプをエクサウィザーズとともに実施しており、今後も継続的にDPPの育成を行っていく計画だ。

廣瀬部長は「『デジタル人材と言えば外から獲得するしかない』という考え方が完全に変わってきた。今回の取り組みを通して、各部門にデジタル人材が育ちつつあり、参加したメンバーが起点となり部門を超えて連携していくことで各部門の壁が自然と崩れていくのではないか。今は各部門に研修に人を出してもらうことをお願いしているが、今後は自分自身がキャリアを磨くのに自主的に参加してもらいたい」と力を込める。

Member

  • 木股瑠惟
    木股瑠惟
    株式会社エクサウィザーズ
    Care&Med Tech事業部 ライフサイエンス部 ライフサイエンスグループ
    グループリーダー
  • 上峠隆行
    上峠隆行
    株式会社エクサウィザーズ
    DX人材育成事業部 DX人材育成プロダクト部 ラーニンググループ
    グループリーダー
  • 継田政哲
    継田政哲
    株式会社エクサウィザーズ
    産業イノベーション事業統括部
※記事中の役職名は取材当時のもの
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