企業向けChatGPT「exaBase 生成AI」を数百名に導入。
プログラミング未経験社員がソースコードを生成し、シフト作成を効率化
ロート製薬株式会社
OTC医薬品(一般用医薬品)およびスキンケア事業をコア事業とする製薬会社。近年では、第3の柱として機能性食品事業に注力しているほか、医療用眼科、再生医療、開発製造受託(CDMO)にも事業領域を拡大させようとチャレンジを続けている。現在、世界110か国以上のネットワークを活用。世界の人々にWell-beingを届け、長寿を健康で幸せに過ごすことができる持続可能な社会の実現を目指す。
概要
overview
コーポレート・アイデンティティとして「NEVER SAY NEVER」を掲げるロート製薬。生成AIの可能性にいち早く着目し、会社全体での活用による業務効率化や生産性向上を目指した。
課題
・ChatGPTへの入力情報が学習に利用されることや、利用されないための設定を社員個人任せにすることはリスクが高いと考えた
・ChatGPTを社員自身で個別に契約した場合、情報システム部で設定等のコントロールができない点にリスクや不便さを感じた
解決
・エクサウィザーズが提供する、ChatGPTを活用した企業向け生成AIサービス「exaBase 生成AI powered by GPT-4」を全社員約2000名に希望者を募り、数百名を対象に導入した
・入力情報が学習に利用されないことや、禁止ワード登録・機密情報の自動ブロック機能などセキュリティリスクに対応した機能や管理機能が充実している点が決め手となった
・スピーディーに導入できることや、AIやデータに強みを持つエクサウィザーズが提供するサービスであることも決め手となった
・導入後は、文章生成や要約、企画の案出し、翻訳、ソースコードの生成等に活用しており、社員からも「とても便利」と好評を得ている
事例の紹介
ロートグループが、未来のありたい姿として策定した「ロートグループ総合経営ビジョン2030」において掲げたスローガンは「Connect for Well-being」。世界の人々がWell-beingを実感できる時間を、少しでも長くしたいという思いがそこにはある。
コーポレート・アイデンティティとして「NEVER SAY NEVER」を掲げるロート製薬は、情報システム部門主導のもと、生成AIをいち早く導入した。この生成AIを、社員はどのように活用し、どのような成果を上げているのだろうか。本記事では、ChatGPTを活用した企業向け生成AIサービス「exaBase 生成AI powered by GPT-4」導入に至った背景や決め手、その効果について、情報システム部の田中 利幸氏に話を伺った。
「ChatGPTのリスクを避けて使用しない」ではなく、「安全に利用するための最適な方法」を模索
「~Connect for Well-being~」
このビジョンを実現するためにも、デジタル活用が鍵を握るが、ロート製薬におけるDX推進の考え方は少し独特だ。「DXと言ってもシステムが主役ではないのです。社員一人ひとりがデジタルでいかに自分たちの業務を革新や効率化に活かしていくのかということを重視してDXに取り組んでいます。機械学習などの知識を持たない非エンジニアでも、簡単に大きな効果を実感することのできるChatGPTなどの生成AIサービスは、まさに『デジタルの自分ごと化』を体現するツールだと感じました」と語るのは、情報システム部の田中 利幸氏。
そんな同社が、今回導入したのが「exaBase 生成AI powered by GPT-4」だ。2022年11月にOpenAIが発表した「ChatGPT」は大きな反響を呼び、導入を模索する企業も現れる中、セキュリティの問題など懸念点が指摘されていた。そこでエクサウィザーズは企業導入に最適な生成AIソリューションとして、同サービスを開発。情報漏洩を懸念するセキュリティはもちろんのこと、導入やコスト、運用の課題などを解決したサービスとなっている。
田中氏は「ロート製薬では、世間で大きな話題となる前から生成AIの大きな可能性に着目していました。一方で、先行して導入した企業でのセキュリティ事故などのリスクも理解していました。しかし、私たちは『人がやらないことをやる』という創業当初からの企業文化を持っており、『ChatGPTのリスクを避けて使用しない』ではなく、『安全に利用するための最適な方法』を模索することに決めました」と語る。
充実したセキュリティリスク対応機能や管理機能、AI/データに強みを持つエクサウィザーズが提供していることが導入の決め手
サービス選定にあたっては、他のツールも複数検討の候補に挙がっていたという。
「ChatGPTを社員自身で導入するとなると、データを学習させないオプトアウト申請を個別にしなければならず、他社でも事故が起きているように、我々がコントロールするのは難しいだろうと考えました。『exaBase 生成AI』は原則オプトアウトの設定になっていることに加えて、禁止ワード登録や機密情報ブロック機能などのセキュリティリスクを低減するための機能が充実している点に魅力を感じました」
加えて、「SaaS型で契約後すぐに利用できる点や、AIやデータの専門家であり、過去に取引があって信頼感を持っていたエクサウィザーズさんが提供しているサービスという点も決め手となりました」と教えてくれた。
文章生成や要約、企画の案出し、翻訳、ソースコードの生成など幅広い業務に活用
本格導入から1ヶ月が経った現在、社内ではどのように活用されているのだろうか。
田中氏は次のように語った。「個人単位の利用時間や利用ログを確認できるため、利用時間が上位トップ10の社員に対して、どのように活用しているのか、どんな点が便利だと感じているのかを実際にヒアリングを進めています。工場で働くあるプログラミング未経験の若手社員は、exaBase 生成AIでシフト表を作成するためのExcel VBAコードを生成したのだそうです」
出典:ロート製薬株式会社
(exaBase 生成AIを活用し、シフト表を作成するためのExcel VBAコードを生成)
「背景を聞くと、上司が毎月手作業でシフト表を作成しているのを見て『楽にしてあげたい』という想いから始めたのだそうです。実際のシフト表を見せてもらうと、プログラミングが得意な人でもそう簡単には作れないような素晴らしい出来でした。生成AIは現場の課題をよく知った人がデジタルを活用して課題解決をすることのできる、まさに『デジタルの自分ごと化』ができるツールだと実感しました」(田中氏)
そのほか、「文章の作成や要約、企画の案だしなどのシーンでも便利に使っているという声を聞きます。ある社員は、外国語の翻訳に活用しており、翻訳のニュアンスやトーンを微調整するために追加の指示ができることや、前後の文脈を考慮した自然な翻訳ができることが『とても便利』なのだと教えてくれました」(田中氏)
管理機能はシンプルで使いやすく、利用状況の把握も容易
田中氏は、管理者目線での使い勝手についても教えてくれた。「管理画面がシンプルで使いやすく、ユーザー登録なども容易で、個人や組織単位の利用状況も簡単に把握できる点が便利です」
また、特に気に入っている機能として挙げるのが「機密情報ブロック機能」だ。マイナンバーや銀行口座、クレジットカード番号などの機密情報が入力情報に含まれていた場合に、自動的にアラートを出しブロックする。田中氏は「禁止ワードを登録する機能もついていますが、こうした基本的にブロックしたい情報を最初から禁止してくれているのはありがたいですね」と評価する。
機密情報ブロック機能(ご利用イメージ)
定量的な業務効率効果のほか、今までに無い情報やアイディアを得られることも生成AIの価値
今後、生成AIの活用により生産性がどのくらい上がったのかなど定量的な効果測定も行っていくというが、それ以外にも期待している効果があるという。
田中氏は「生成AIの効果は、文章の作成や要約、企画の案だしなどの業務効率効果に留まらないと考えています。例えば、これまで量が膨大で読みきれていなかった論文などのデータを要約することで、今までは得られていなかった知識やノウハウなどを簡単に手に入れることができるようになることも生成AIの大きな価値だと考えています」と語る。
将来的には、社内外データを取り込んで、自社専用の生成AI環境を構築できるexaBase 生成AIの「データ連携」機能などを活用し、これまでの自社資産としてある、さまざまなドキュメントを読み込ませ活用したいと田中氏。「こうした社内文書を活かしながら、薬事法や法務のチェック作業の効率化にも活用の幅を広げていきたいと考えています」
これからは、人間がゼロからアイデアを出すのではなく、生成AIに目的や方向性を示し、複数のアイデアを提示してもらい、そこから人間が選ぶようになるだろう。そしてそこからさらにブラッシュアップしていく。より良いアイデアを生み出すにも、大幅な生産性向上につながるに違いない。
「生成AIはこれまで自分では思いつかなかったようなアイデアも出してくれます。例えばWebサイトを制作する際、これまでは広告代理店が提示してくれた案の中から選択していましたが、これからは自分たちでアイデアを簡単かつスピーディーに具現化できるようになるでしょう」
ロート製薬でもワークショップを開き、社内での活用をより加速させる方針だ。「生成AIを、私たちの業務に合わせた形で使いこなせるようになることが重要です。そうしたことができる人財の裾野をどんどん広げていきたいです」と田中氏は語った。