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第一実業、ChatGPT × 未来洞察による自社の強みを活かした事業創出プログラム、Backcasting Sprintで攻めのDX施策を創出

2023年11月9日

第一実業株式会社

第一実業では、2023年4月にDX戦略に特化した新組織「デジタルイノベーションセンター」を新たに創設し、全社を挙げたデジタル変革への歩みを本格化させた。今回、攻めのDX施策を考える取り組みとしてエクサウィザーズの提供する「Backcasting Sprint」が選ばれた。
本記事では、プロジェクトに至る背景、研修プログラムの成果などについて、第一実業の上野常務と井畑氏に話を伺った。聞き手は、実際にプロジェクトをリードしたエクサウィザーズ の村田と川井が担当した。

概要

overview

次世代型エンジニアリング商社をビジョンとして掲げる第一実業は「攻めのDX」を検討するパートナーにエクサウィザーズを選んだ。 両社は、Backcasting Sprintというエクサウィザーズ独自の未来洞察による自社の強みを活かした事業創出プログラムを通じて10の事業アイデアを創出。また、本プロジェクトではChatGPTを活用して未来洞察の素材収集や事業アイデアの壁打ち、アイデアの評価などを実施し、3ヶ月という短期間で新規事業プラン作成を実現した。

課題

・DXの重要性が増す一方で、第一実業ではデータやデジタルの活用を前提とした事業やシステムの開発に関する知見を持つ社員が少なかった
・社内のバックオフィス業務の効率化やCRMの導入など守りのDXにはすでに着手していたが、AIを活用した新規事業創出など「攻めのDX」には未着手だった

解決

・非線形の未来と線形な未来から新規事業やDX施策を短期間で考えるBackcasting Sprintを実施
・ChatGPTを活用したワークをプログラムに組み込み、ワーク時間の短縮や施策の質を底上げ
・AIや新規事業創出に知見を持つエクサウィザーズのAIコンサルタント、デザインコンサルタントが伴走支援

事例の紹介

アナログな会社を生まれ変わらせるためには「攻めのDX」が必要だった

機械専門商社の第一実業は、プラント・エネルギーやエレクトロニクスなど7つの事業セグメントにおいて顧客に合わせた機械設備の導入支援を行っている。7つの事業セグメントは全く別の市場で、業界の雰囲気、顧客、商習慣などがそれぞれ異なっていた。上野氏は「営業の対応の仕方一つとっても、本部、部門、個人によってバラバラで、まさにアナログな昭和営業の会社でした」と話す。

ITツールの活用は必要に応じてやってきた。グローバルでの情報共有のやり方を考えるべく、社内にグローバルITインフラプロジェクトというバーチャル組織を立ち上げたが、その直後に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に見舞われた。リモートワークが必要ということでコミュニケーションツールを導入するも、ITツールをフルに活用しないと事業活動を推進できないと判断。上野氏はグローバルITインフラプロジェクトの責任者として、ITツールの本格的な活用に乗り出したという。

コロナ禍の2021年に同社は新しい経営理念を作り、「人をつなぎ、技術をつなぎ、世界を豊かに」をミッションに掲げた。AIとITというデジタル技術をフル活用して「生産性の向上」と「新しいビジネスの創出」という2つのビジョンを実現するべく「デジタル戦略推進部」を設置。CRMや各種ツールの導入などを進めた。

さらにグローバルにデジタル戦略を遂行し、AIをフル活用するためには人材強化が必要と考え、2023年4月に「デジタルイノベーションセンター」を設置した。上野氏は「CDO(Chief Digital Officer)という役職に就かせてもらいました。これは社内向けに本気を示すメッセージでもありました」と語る。

デジタルで会社を生まれ変わらせるためにはトップも事業責任者も現場も変わらなければならない。デジタルイノベーションセンターの配下にデジタル戦略部を置き、既存の情報システム部と一体で運営していくこととした。

デジタル戦略部では、顧客管理、マーケティングオートメーション、カスタマーサポートなど、さまざまなテーマに総合的に取り組んできた。そして現在、ERPやCRMなどとのデータ連携、社内ポータルの改善、SNS(企業版Facebookなど)の導入などを進めている。生成AIに関しては、会社としてChatGPTを活用していくことを早期に宣言。2023年4月には運用ガイドラインを策定した。

「とはいえ、これらは守りのDX。当社は世間一般の企業、特に大手企業に比べるとデジタル化は正直周回遅れの企業でした」と上野氏。必要なことはどんどん進めるが、今から他社の後を追いかけて同じプロセスをたどるのではなく、リープフロッグ的に一気に先頭集団の最後尾ぐらいにつけるような形でやっていきたい。そのためのキーワードはAI。「AIとITで会社を生まれ変わらせたいし、第一実業という会社が新しい存在に映るような形を目指したい」(上野氏)

今回のプロジェクトに至った背景には大きく2つの理由があったという。

1つは2022年5月にV2030という成長戦略を策定したこと。同社は2030年に年商3000億を目指す長期ビジョンを初めて掲げた。上野氏は「従来は3ヶ年計画の連続で、ある程度先が見える将来の積み上げ式の計画でした。しかし今回は2030年にどうありたいかを考え、そこから逆算して2024年までの3ヶ年計画(MT2024)を作りました」と説明する。積極的な事業投資を盛り込み、中核領域以外の隣接領域での新規事業や、全く新しい飛び地での新規事業まで取り組んでいくこととした。しかし、社内のメンバーに新しいもの考えろといってもなかなかできるものではないため、全く新しい視点で進める必要があった。

もう一つはDX戦略で、会社がデジタルで生まれ変わる必要があった。「ITリテラシーを高め、AIを活用したソリューションや商品を起案していけるようになりたい。そうした発想に慣れるためにもデジタルの教育が必要でした」(上野氏)

「発想力」と「デジタル力」を育成する研修プログラムをエクサウィザーズに相談

上野氏は「エクサウィザーズとの出会いは、一年ほど前に同社のセミナーに参加したことでした」と振り返る。「セミナー後にエクサウィザーズの大植常務から打ち合わせの打診があり、話を聞いてみたところ、同社がAIのさまざまなビジネスに取り組み、製造業の顧客にもいろんな提案をしていることに興味を持ちました」(上野氏)

一時期、他のAI企業に社員を出向させていたこともあった。AIの切り口から顧客にソリューション提案しようとしたが、PoC止まりになってしまうという課題があった。そこで今回のプロジェクトでは人材育成の方向から入り、「発想力」と「デジタル力」という2つの能力を育成する研修をエクサウィザーズに相談した。

2023年春のプログラム開始に向け、準備のためのディスカッションを繰り返し行った。「プログラムを始めるにあたり、教育サービスを提供する会社と教育サービスを受ける会社という関係では終わらせる気はありませんでした。エクサウィザーズはAIの実装をし、当社は顧客基盤があるため、AIビジネスの協業の可能性も視野に入れていました」(上野氏)

エクサウィザーズ独自の未来洞察プログラムBackCasting Sprintで事業テーマを創出

エクサウィザーズは、AIとデザインの力で企業変革をリードする共創型プログラム「exaBase Sprint」を提供している。これは、未来洞察から事業テーマを創出する「Backcasting Sprint」、DX施策の具体化とDX人材育成の両輪を実現する「AX Sprint」などのプログラムで構成されている。今回のプロジェクトで採用したのは、未来洞察から事業テーマを創出する「Backcasting Sprint」だ。

第一実業は「攻めのDX」を展開したいという強い意向があった。そこでBackcasting Sprintを採用し、DX施策とAIを活用した新規事業プランの作成、およびDXの理解と新規事業を生み出すための考え方や想像力を有する人材の育成という、2本立てのプログラムを実施することにした。

当プログラムは、線形未来と非線形未来という2つの未来を定義する点に大きな特徴がある。線形未来とは、例えば電気自動車や自動運転の普及など、現時点でストレートに考えることができる未来のこと。非線形未来とは、例えばロボットが街を歩き回る、宇宙で生活する人たちが出てくるといったややSFチックな未来のこと。非線形未来だけだと着地しづらく、線形未来だけだとあまり面白くないアイデアに留まってしまう。その両方を組み合わせたちょうど良いポイント、すなわちインパクトダイナミクスを発想していく。同時にChatGPTの活用もプログラムに組み込んだ。GPT搭載型のプログラムを実施するのはエクサウィザーズとしても初の試みであった。

「2040年の未来を洞察し、次世代型エンジニアリング商社としてAIを活用した新たな事業を創出する」をゴールに、ワークショップによるテーマアップとワークショップ後の事業プラン作成を3ヶ月(2023年6月から8月)にわたって実施した。7つの本部から精鋭社員10人が参加。入社1年目の社員から部長職まで幅広く集まった。エクサウィザーズはファシリテーターとして参加した。

具体的にどのようなワークを行ったのか。

まずは「未来の兆し」と呼ばれるカードを作り、非線形未来を発想した。少し先の未来のカルチャーや最先端の技術などを特集しているニュースメディアの記事からカードを100個ほど作った。次にChatGPTに指示し、カードを組み合わせてデザインフィクション的なストーリーを50個ほど作った。線形未来については、業界トレンドや第一実業の今後注力していくドメイン(隣接領域、すなわちリサイクル、サプライチェーン、5Gなど)に絞り、エクサウィザーズが整理した資料を事前に用意。線形未来と非線形未来を掛け合わせてアイデアを発想した。

次に第一実業のアセットリソース(強み)を活かしてアイデアをどう実現するかを考えた。同社の顧客基盤を活かして何ができるか、取引先の機械の図面データを活かしたビジネスができないか、なぜ第一実業はこれらをやるのか、などを検討し、アイデアを具体化させた。

そして具体化したアイデアの評価を行った。「インパクト」と「不確実性(未来に爆発的にヒットするかどうか)」の2軸で評価し、インパクトが高いものと不確実性が高いものを1つないし2つピックアップした。

最後に、ピックアップしたアイデアのランディングページ(プロトタイプ)を作成した。どういうコンセプトなのか、誰のどんな課題を解決し、どういう価値をもたらすのか、をデザインし、アイデアをより具体的なイメージに落とし込んだ。「最終的に10のアイデアを事業としてしっかり組み立てた上で役員報告会に臨みました」(上野氏)

遠方からの参加者もいるため、オンラインとオフラインのワークを組み合わせてワークショップを設計した。上野氏は「昔であればアイデアを書いた紙を壁に貼り付けていましたが、オンラインワークショップツールを利用すると、Web上で書き込みや保存ができました。みんなでコメントやマークつけたり、投票したりもできました」と振り返る。

ChatGPTの活用で発想の幅が広がり「たたき台として使用すると非常に有効」

ChatGPTの活用を組み込んだプログラムの実施は、エクサウィザーズとしても今回が初の試みであった。具体的には、未来素材の収集、アイデア発想、事業性評価や事業プランの作成時にChatGPTを活用した。

未来素材の収集については、会社の事業にとらわれすぎず、各人の好きなテーマ、興味あるテーマを中心にアイデアを出していった。井畑氏は「出てきたアイデアはベンチャー企業が取り組んでいることが多く、宇宙エレベーターといったユニークなものも出てきました。ChatGPTを活用することで発想が広がり、より肉付けされた情報、ある程度まとまった情報が出てくるため、より具体化でき、手間も減りました」と話す。

アイデア発想については、最初は各人でアイデアを練り、アイデアが出なくなったらChatGPTを活用するようにした。途中、エクサウィザーズがファシリテーターをしてくださりエレベーターピッチを記載した紙を配布。それをプロンプトとしてアイデアを練るワークも行った。「ある程度の雛形をもとにChatGPTに未来を想像させると、いろいろな回答が返ってきました。自分では発想できなかったアイデアもかなりありました」(井畑氏)

事業プランを作成する際にもChatGPTを活用した。「個別企業の将来の売り上げ規模や市場規模の予測も出てきたのでかなり参考にしました。ビジネスマッチングサービスを展開する企業の課題について聞くと、マッチングサイトが抱える一般的な課題についての回答が返ってきたので、その課題に対して自分たちがどんな付加価値を提供できるかを考えました」(井畑氏)

井畑氏は今回のプログラムへの参加を通じてChatGPTの便利さを実感し、その後も日常的に頻繁に活用しているという。自分だけでなく、社内ミーティングで「ChatGPTに聞いてみよう」といったシーンもあるそうだ。

上野氏は、ChatGPTの活用について「発想の幅がすごく広がり、早く結論にたどり着けました。一方で、ChatGPTは間違った数字を出してくることもあるので、鵜吞みにせず、あくまでも骨格、たたき台、ベースとして使用すると非常に有効だと思います」と評価する。「当社の会社情報を読み込ませた上でアドバイスをもらうと、より具体的で親近感の湧くテーマやアイデアが出てくるのではないか」とより有効な活用に期待する。

副次的なメリットもあったという。「今回非常に良かったのは、参加者のみならず、社内的にも開発の検討業務にChatGPTを使っていく実例ができたこと。社内的にも関心が高まると思いますし、新しい取り組みとして対外的にもアピールできるポイントにもなります」(上野氏)

エクサウィザーズとの協業も視野に、プログラムの成果を今後に活かす

今回のプログラムを総括して、上野氏は「ChatGPTに初めて本格的に取り組んで、未来洞察などスタートラインを広げることができたのは非常に良かったと思います。特に長期的なビジョンや成長戦略を考える時に有効であることが分かり、社内的にもさまざまな場面での活用が広がっていくのではないかと思います」と語る。

「個人的な感想として、IT企業の仕事に触れることができたのはうれしかったです。当社はモノづくりの固い雰囲気の会社ですが、IT企業の仕事の進め方、定例会、ワークショップのツールなど新鮮でした。そういった雰囲気を持つ機械商社になりたいと思いました」(上野氏)

一方、井畑氏は「中長期計画などを策定する際に、経営企画や管理部門は未来からさかのぼってバックキャスティングで考える習慣はありましたが、それ以外の部門のメンバーがバックキャスティング思考で考えるきっかけをいただいたのは非常に貴重だったと思います」と話す。

「インパクトダイナミクスなどの専門用語を最初に聞いた時は難しそうだと思いましたが、縦軸・横軸でそれぞれの事象を考えてアイデアを発想する考え方はどんな業務でも必要なことだと改めて思いました。単に学びで終わらせるのではなく、どう事業化するかまでしっかり考えてやっていきたい」(井畑氏)

今後について、上野氏は「今回ピックアップした10のテーマは関連性もあるので、2つか3つに統合したら結構いいプランなりそうなものもあります。それらをどう扱っていくかを考えていきたいですし、今回参加した人たちの得た知見を活かして社内に広げていくことを目指したいと思います」と次なる展開に期待する。「これをきっかけに、AIを活用したビジネスモデル、新商品やサービスを作り、社内のいろんなシーンでAIが活用され、気づいたら第一実業は生まれ変わっていたとなれるようにしていきたい」(上野氏)

最後に上野氏は、エクサウィザーズとの今後の連携について次のように語った。「人材育成という観点で次のステップに進むとしたらどうするか、社内に浸透させるにはどんなことをしたらいいのかを相談したいです。実際に事業として動き始める段階では事業の協業という形で検討できないかとの想いもあります」

Member

  • 村田 智士
    村田 智士
    株式会社エクサウィザーズ
    サービスイノベーション事業部
    デザイン部
    サービスデザイングループ
  • 川井 亮
    川井 亮
    株式会社エクサウィザーズ
    産業イノベーション事業統括部
    産業イノベーション部
    Industrialsグループ
※記事中の役職名は取材当時のもの
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