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    「Backcasting Sprint」を採用し、次世代のヘルスケア営業を模索
    生成AIも活用し、未来予兆から非連続な変革を見いだす

協和キリン✖️エクサウィザーズ
「Backcasting Sprint」を採用し、次世代のヘルスケア営業を模索
生成AIも活用し、未来予兆から非連続な変革を見いだす

2024年4月12日

協和キリン株式会社

協和醗酵工業が2008年にキリンファーマとの合併により、協和発酵キリン株式会社に商号変更。2019年に協和キリン株式会社に社名を変更した。2021-2025年中期経営計画において、「Life-changingな価値の継続的創出」実現のため「アンメット・メディカルニーズを満たす医薬品の提供」に向けた活動を行っている。

概要

overview

協和キリンは2021年に公表した中期経営計画で「高付加価値製品による競争力強化」を掲げており、デジタルで実現する会社のあるべき姿を「デジタルビジョン2030」として策定している。デジタル化の進展と、規制の遵守は新薬の開発だけでなく、営業の現場にも変革を求めている。

課題

製薬業界でもデジタルを活用して変革を実現するリーダー人材の育成が急務となっている。特に製薬業界ではコロナ禍を経て、営業部門では、リアルな顧客接点、そして社会との関わり方の再定義が求められている。

解決

エクサウィザーズが提供する、未来洞察による自社の強みを活かす事業創出プログラム「Backcasting Sprint」を活用。従来の延長線上にない発想で、今後の協和キリンや社会の姿についてアイデアを創出し、未来を洞察する力、イノベーティブな思考力の強化で成果があった。

事例の紹介


 非連続な未来の地域医療や今とは違う患者さんと病院の関係を想像し、​自分達はこう変わる、を描く。

 協和キリンが今回、エクサウィザーズ独自の未来洞察による事業創出プログラム「Backcasting Sprint」のワークショップで掲げた達成目標である。

 取り組んだのは、営業部門から選抜した次世代の幹部候補メンバーだ。「これまでの営業の在り方を壊して、10年後勝てる組織になれるか?」という問いに対して、全国から集まった14人が挑戦した。

協和キリンの高井良浩氏。営業本部 京滋北陸支店 支店長(研修時は東京支店 新宿第2営業所 所長)を務める

 彼ら・彼女らの視線の先にあるのは、10年後の協和キリンの営業組織である。

 「営業は顧客との接点となる重要なポジションであるが、現場での対応に忙殺されてしまい、自分や会社の未来を考えにくい面がある。枠にもはまりがちだ。今から5年、10年前を振り返ると我々を取り巻く環境は相当に変わっているのだが、そこに意識がいっていない」

 協和キリン 営業本部京滋北陸支店の高井良浩支店長は、営業部門の課題をこう語る。同氏は研修時、東京支店 新宿第2営業所所長を務めていた。

 そこで発想を大きく転換することにしたのだ。未来は現在の発展として位置付けるのが一般的ではあるが、Backcasting Sprintを採用することで未来の姿を発想し、そこから現在すべきことを遡って考えるのである。

 Backcasting Sprintプログラムの開発責任者である、エクサウィザーズ サービスイノベーション事業部  デザイン部の袖山 晋は「非連続な視点を加えることで、未来を見据えつつ、従来とは異なる本質的なアイデアを見いだすことができる」と解説する。

エクサウィザーズの袖山晋。デザイン部に所属し、Backcasting Sprintプログラムの開発責任者を務める

非線形な”未来の兆し”を収集

 Backcasting Sprintは、現在の延長線上にある「線形な未来」、将来的に突然現れる可能性がある「非線形な未来」を見いだしたうえで、線形と非線形の事象を掛け合わせるのが特徴だ。これによって、将来実際に起こりうる新たかつ、自社や会社に影響を及ぼす、対処が必要となるような発想を導き出す。

 一連の内容はワークショップ形式で進め、Step1として「未来素材の収集」、Step2として「発想や整理」、そしてStep3として「市場規模であるTAMや、投資対効果のROIの試算」といった3段階で取り組む。提供内容は、各社の置かれた業界やその競争環境に応じて調整していく。

図 Backcasting Sprintの概要。マクロトレンドを収集することによる線形な未来、未来の兆しの収集・発想による非線形な未来の整理と掛け合わせから、事業や会社、社会の将来像を見いだす

 まずは、線形な未来について、同業他社や異業種、国の施策などのマクロトレンドを基にして、企業や社会のニーズを抽出する。協和キリンの場合、「セールステック」「ロボット」「ヘルスケア」「スマートシティ」「トラベルテック」を線形の未来の討議領域として設定した。

 プログラム序盤の山場とも言えるのが、非線形な未来の兆しの収集である。

 自身と同僚と対話しながら見出した、非連続な未来に対する発想をまとめあげるのが「デザインフィクション」と呼ぶシートである。1枚1テーマで、シートの項目を埋めていくことで、複数の未来の兆しから想起される社会変化シナリオの意図、影響範囲などを整理していくことができる。

協和キリンの堀内祥仁氏。営業本部内のデータガバナンスやデータ利活用を統括する

 営業本部内のデータガバナンスやデータ利活用を統括する、営業デジタル推進室 データアナリティクスグループの堀内祥仁グループ長は、「非線形なこれまでにないものを見いだせと言われると、やはり自分の興味のあるところによりがち。ただ、他の人が集めている未来の兆しを見ることで、視野が大きく広がるのを感じた。いつもと異なる頭の使い方が必要になることは大変だったが、常にワクワクしながら取り組むことができた」と感想を述べる。

 未来を発想するうえで、重要な材料となるのが、新聞や雑誌の記事である。単に将来起こりそうなものを挙げるだけでなく、そこから社会や自社、自組織への影響まで深掘りして考えていく。

 高井良支店長は「もともとは自分の発想だけど、その枠を飛び越えたところには、こんな興味深い、注視すべき世界があるのかと思った。誰もが予想できなかった、新型コロナウイルス感染症がまさにその例かもしれないが、そうしたものをBackcasting Sprintで見いだしていけると感じた」と言う。

生成AIで発想の幅を拡大する

 協和キリンの参加メンバーからは「非線形の兆しからデザインフィクションを見いだすことができるのか、不安」との声もあったが、ワークショップを実施するなかで、蓋を開けてみると100以上のデザインフィクションが集った。どれもしっかりとした未来洞察に基づいたもので、興味深いものとなった。

 こうした発想を促進するため、生成AIであるChatGPTも活用して、アイデアの幅だしや整理を行うのが、Backcasting Sprintの特徴である。特に将来を見据えたデザインフィクションの編纂においてもChatGPTの活用は有用である。

 エクサウィザーズは生成AIの活用で独自のノウハウを有しており、デザイン部メンバーが未来の兆しを整理するためのプロンプトを用意し、協和キリンの参加者に活用いただいた。

 ワークショップの実行をエクサウィザーズ側で担当した鍵和田 真人は「ChatGPTを活用することで、情報収集の着眼点や具体的なデザインフィクションの作成イメージを持ちつつ、短時間でより多くの未来の兆しを集めることができた」と語る。

 なお、今回は協和キリン側が社内で利用しているChatGPTを活用した。Backcasting Sprintでは、エクサウィザーズのグループ会社が開発・提供する法人向けのChatGPTサービス「exaBase 生成AI」を、プログラムの期間中に無償で利用できるようにしている。

業界のAI・デジタル技術活用のドメイン知識で支援

 Backcasting Sprintでは、各業界に精通したエクサウィザーズのコンサルタントが並走し、事業プランまで落とし込んでいく。今回は、ヘルスケア企業へのAIやデジタル技術活用のコンサルティングに従事している、AIプラットフォーム事業統括部 法人事業部グループリーダーの木股瑠惟がリードした。

 そして、Backcasting Sprintなどのプログラムを開発・提供するサービスイノベーション事業部  デザイン部の鍵和田と袖山 とともに、3人でワークショップの運営、発想の支援を担当した。

エクサウィザーズでヘルスケア事業を担当する木股瑠惟(左)、Backcasting Sprintを担当するデザイン部の鍵和田真人(右)

 これらエクサウィザーズのメンバーが、単に話題を挙げるだけでなく、その影響範囲やインパクトを深掘りするために伴走していった。ChatGPTの活用も支援した。

 

 

経営的な側面も加味して最終化

 非線形な未来の予兆を線形な未来と掛け合わせ生まれたアイデアを経営的な側面から実行すべきかどうか、市場規模(TAM)や対投資効果(ROI)なども厳しく見極める。ステークホルダーは誰なのか、自社で活用できるリソースは何か、スタートアップなど外部のリソースを活用できるかどうかも検討する。

 そして、作り上げた事業プランについて、最終報告会として営業本部長をはじめとした営業本部の幹部に対してプレゼンテーションを行った。

 

協和キリンの中村吉宏氏。営業部門で人材育成や研修をグループ長として統括する

 営業部門で人材育成や研修を統括する中村吉宏グループ長も「特に営業は現場の数字には敏感だが、経営の数字が得意でない人もいる。マネジメント層を育成するという点では、未来志向だけでなくROIによる事業性評価は非常に重要だった」と話す。

 実際、営業本部長からは「従来の次世代経営層の研修に比べると、発想を促進する点でプログラムが練り込んで考え込まれている印象だった。将来必要とされる、プロジェクトマネジメント力、思考力、ビジネス力などを習得できる研修で、いままでにないコンテンツだ」との評価があったという。

「営業にもイノベーションが求められる時代に」

今回のワークショップは、全社的なデジタル企画人材育成におけるエクサウィザーズとの協業をきっかけとし、協和キリンの営業本部に提案することで実現した(参考記事「全社のDXを牽引するデジタル企画人材を育成 アイデア創出プログラムの4割がプロジェクト移行予定」https://exawizards.com/works/22276/

 現場の課題に対するデジタル技術を活用した解決策の検討も重要だが、「グローバルに先行きを見通すことが難しい情勢に対応できる力を養う研修ということで、Backcasting Sprintをお勧めした」(木股)

協和キリンの加藤靖子氏。人事部で人材マネジメントを担当しており、本企画に携わった当時は営業企画部に所属

 協和キリン 人事部 人材マネジメントグループの加藤靖子氏は、「会社の将来を支える次世代リーダーの育成については、単にデジタル活用力を引き上げるだけでなく、イノベーションを起こす力も身につけてもらえるような研修を企画する必要性を感じていた。製薬業界は守るべきルールや規制が多い。その中で既存の枠を超えるような発想を行うことの難易度は高く、これまで行ってきた研修でも大きな壁だったが、Backcasting Sprintは、その壁を超えることのできるベストな内容だった」と話す。加藤氏は本企画に携わった当時は営業企画部に所属していた。

 Backcasting Sprintは協和キリン営業部門でこれまで実施してきた研修とは、想定しているスパンや実施形態も異なるものだった。「そのため受講者からはネガティブな反応があることも想定したが、研修後のアンケートでは8~9割以上が肯定的な回答であった。また、Backcasting Sprintの進め方や討議領域について、事前に数か月間にわたりエクサウィザーズのメンバーと密に議論してきたことも成功要因だった」(中村グループ長)。

 実際、現場にも根付き始めている。「今回のワークショップで得た手法や考え方について手応えを感じており、プログラム終了後も日々の業務で活用し始めている」(堀内グループ長)。

 協和キリンは、2030年に向けた新ビジョン「協和キリンは、イノベーションの情熱と多様な個性が輝くチームの力で、日本発のグローバル・スペシャリティファーマとして病気と向き合う人々に笑顔をもたらすLife-changingな価値の継続的な創出を実現します」を掲げている。現在、達成に向けて、2021-2025年中期経営計画を実行中である。

 高井良支店長は「これまで中長期といっても3、5年先しかみていなかった。今回、Backcasting Sprintに取り組んでみて、3年後はあるかもしれないけど、10年後に必要かと考えたら、『いまやめよう、大胆にとめよう』とも判断できるようになった。思考法が完全に変わった2030年ビジョンに向けても活用していきたい」と意気込みを語る。

Member

  • 木股瑠惟
    木股瑠惟
    株式会社エクサウィザーズ
    AIプラットフォーム事業統括部 法人事業部
    法人第二部 1グループ
    グループリーダー
  • 袖山晋
    袖山晋
    株式会社エクサウィザーズ
    AIプラットフォーム事業統括部
    デザイン部
    サービスイノベーションデザイングループ
  • 鍵和田真人
    鍵和田真人
    株式会社エクサウィザーズ
    AIプラットフォーム事業統括部
    デザイン部
    サービスイノベーションデザイングループ
※記事中の役職名は取材当時のもの
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