企業変革を目指す出光興産
新規・既存の両事業DX、人材育成のパートナーに
エクサウィザーズを選んだ理由
出光興産株式会社
石油精製、販売事業を中心に、潤滑油、アスファルト、再生可能エネルギー、石炭、電子材料など多岐にわたる事業をグローバルに展開。2050年のカーボンニュートラル社会の実現に向けて、従来の化石燃料事業主体から、事業領域を「一歩先のエネルギー」「多様な省資源・資源循環ソリューション」「スマートよろずや」の3つに転換することを目指す。
概要
overview
抜本的なビジネスポートフォリオの転換を目指す出光興産は、変革のコアパートナーの1社にエクサウィザーズを選んだ。 両社は、業務提携を行い、全国6000ヵ所以上のサービスステーションを地域課題解決のサービスハブに進化させる「スマートよろずや」構想の開発や社会実装、既存事業のDX、DX人材育成の実現に向けて協働して取り組みを進めている。
課題
・出光興産では、DXの重要性が増す一方で、データやデジタルの活用を前提とした事業やシステムの開発に関する知見を持つ社員が少ない
・スマートよろずや構想や既存事業DXなど、デジタルを活用した事業変革に向けた構想・企画をするにあたっては、出光興産側のビジネス用語で議論を重ね、それをテクノロジーと繋げていくことができるパートナーが必要だった
解決
・データとAIの知見に加え、業界特有の知識や統合的なビジネス課題解決能力を有するエクサウィザーズと共同でDXを推進することとなった
・エンジニアやデザイナーのほか、エネルギー業界出身者や戦略コンサルティング会社出身者がプロジェクトに参画することで、出光興産側のビジネス用語で業務改革やテクノロジー導入の議論が進んでいる
・多様なスキルを持つエクサウィザーズのメンバーとプロジェクトを進めることで、出光興産側の社員にもDX実現に必要なスキルや考え方が醸成され始めている
事例の紹介
石油元売り会社として、100年以上にわたり日本のエネルギー産業を支えてきた出光興産。
世界的な脱炭素化の動きが加速する今、同社は大きな転換点を迎えている。2022年11月発表の中期経営計画では、既存のエネルギーを安定供給しながら、2050年のカーボンニュートラル社会の実現に向け、事業領域を「一歩先のエネルギー」「多様な省資源・資源循環ソリューション」「スマートよろずや」の3つに転換することを示した。
出典:出光興産株式会社
抜本的なビジネスポートフォリオの転換を目指す同社は、変革のコアパートナーの1社にエクサウィザーズを選び、業務提携を行った(本業務提携後、出光興産はエクサウィザーズの発行済株式を一部取得)。両社は、「スマートよろずや」構想の開発や実装、既存事業のDX、DX人材育成の実現に向けて協働して取り組みを進めている。
本記事では、業務提携に至った背景や理由、具体的な取り組みについて、執行役員 CDO・CIO デジタル・ICT推進部管掌 三枝 幸夫氏、デジタル・ICT推進部 デジタルエコシステム推進室 担当マネージャー 村井 彌高氏に伺った。聞き手は、エクサウィザーズ 取締役 大植 択真と、AIコンサルタント 小松 直人が担当した。
既存エネルギーの安定供給と事業変革の実現にはDXが不可欠
出光興産では、2050年の事業ポートフォリオ転換に向けて、2030年ビジョンを「責任ある変革者」と定めた。既存のエネルギーの安定供給とカーボンニュートラルに資する新たなエネルギーの社会実装を両立する形だ。
2050年の事業ポートフォリオ転換に向けたロードマップ(出典:出光興産株式会社)
執行役員 CDO・CIO デジタル・ICT推進部管掌 三枝 幸夫氏は「これからは、石油製品の需要が減っていく中でも化石燃料を安定供給することやお客様ごとに最適なエネルギーミックスを提供していくこと、また事業転換に向けて様々なビジネスパートナーと共創していくことが重要になります。こういった複雑な事業をオペレーションしていくために、出光興産の未来はDXなしには語れません」と断言する。
出典:出光興産株式会社
DXの重要性が増す一方で、実現に向けては課題を抱えていたという。
三枝氏は次のように話す。「出光興産には、一人ひとりが経営者であるという創業当初からの考えが根付いており、既存事業の運営においてはプロフェッショナルが揃っています。一方で、データやデジタル技術の活用を前提とした事業やシステム開発に関しては、知識や経験を持つ社員が少ないという課題がありました」
これらの課題を解決し、経営計画で定めた目標やビジョンを現実のものにするため、エクサウィザーズが変革のパートナーに選ばれた。
エクサウィザーズの「統合的な課題解決能力」「プロダクト」「信頼性」が業務提携のポイント
両社は、出光興産が掲げるDX戦略のうち、新たな価値創出の一環である「スマートよろずや」構想の開発や実装、データに基づく恒常的なプロセス変革、DXを支える人材育成などの領域で協働して取り組みを進めている。
出典:出光興産株式会社
業務提携にあたっては、「統合的な課題解決能力」「プロダクト」「信頼性」の3つがポイントになったという。
1つ目の統合的な課題解決能力に関しては、エクサウィザーズがデータやAIの知見に加えて、業界特有の知識や統合的なビジネス課題解決能力を有していることが高く評価された。この背景には、エクサウィザーズにはAIエンジニアやデザイナーのほか、様々な業界知識を持つ社員や、戦略コンサルティング会社出身の社員が多く在籍していることがある。これにより、業界特有の課題も含めた顧客課題を深く理解した上で、コンサルティングからAIアルゴリズム開発、UI/UXデザイン、サービス開発・運営、業務プロセスへの実装まで、一気通貫で支援することができる。
実際に、出光興産のプロジェクトには、プラントエンジニアリング業界を経て10年以上コンサルティング業務に従事したメンバーや、石油・ガス開発会社にてプロジェクトエンジニアを経験後、戦略コンサルティング業務に従事してきたメンバーなどが参画し、出光興産側のビジネスのプロフェッショナル達と協働している。
三枝氏も「デジタルを活用した事業変革に向けた構想・企画段階の今は、我々の言葉で議論を重ねた上で、それをテクノロジーと繋いでいくことが重要になります。エクサウィザーズさんとは提携前にも半年ほどプロジェクトを協働しましたが、事業ドメインのスペシャリストが多く、我々側のビジネス用語で業務改革やテクノロジー導入の議論をしていただけることがとても有難いと感じています」と評価する。
2つ目のプロダクトに関しては、スマートよろずや構想に適合する、AIの技術や知見を蓄積したAIプラットフォーム「exaBase」や、今後のエコシステム構築の要となる介護・育児関連のプロダクト、デジタルを活用した事業変革を目指す出光興産にとっては欠かせないDX人材育成サービス「exaBase DXアセスメント&ラーニング」などを有していることがポイントとなった。
3つ目の信頼性に関しては、エクサウィザーズ自体が株式上場していることに加え、年間300件以上のAI・DX案件を手がけ、大企業との成果創出の実績が豊富であることがポイントとなった。
さらに、2030年ビジョンである「責任ある変革者」と、エクサウィザーズが掲げるミッション「AIを用いた社会課題解決を通じて、幸せな社会を実現する」ことの親和性が高いことも決め手になったという。
本提携をリードした、デジタル・ICT推進部 デジタルエコシステム推進室 担当マネージャー 村井 彌高氏は「こういったポイントが大前提にあった上で、エクサウィザーズの皆さんはお会いする方皆魅力的な方ばかりで、そういった皆さんとしっかりと議論を交わし、お互いに信頼関係を築けたことも大きかったと思います」と話す。
AIを活用し、既存ビジネスの抜本的な変革を目指す
では、具体的にどのような取り組みを行なっているのだろうか。
三枝氏は「既存事業のDXにおいては、以前より製油所の保全業務効率化プロジェクトを進めてきました。具体的には、SDM(Shut Down Maintenance)と呼ばれる定期補修業務に係る膨大な手作業を改善するために、保全業務情報を一元化する『SDMくん』というシステムを開発しました。現場と議論を重ねながらシステムをアジャイルで開発することで、組織風土変革の第一歩を築けたと感じています」と語る。
DXの実現に向けて確かな手応えを感じた三枝氏。今後は、エクサウィザーズとの共創により、取り組みをさらに発展させていく。
エクサウィザーズの取締役であり、本提携の統括責任者を務める大植 択真は「『SDMくん』を保全業務全体の業務改革に資する統合データベースに発展させていくため、製油所や事業所のDX推進室を含めて協議を進めています。AIをインテグレートすることで、集約・蓄積されたデータを現場主導で活用していくためのフローを加速できると考えています」と話す。
このほか、数百億円規模の膨⼤な費用と複雑な意思決定が介在する、大型タンカーで原油を輸送する際の配船計画や、素材のサプライチェーンにおいてもAIを活用し、既存ビジネスの抜本的な変革に向けて共に歩みを進めている。
「スマートよろずや」構想実現に向け、既存の取り組みの進化と新たな取り組みを共同推進
両社は、「スマートよろずや」構想実現に向けても、既存の取り組みの共同推進と新たな取り組みの両面からアプローチを進めている。
出典:出光興産株式会社
出光興産では、以前より、スマートよろずや構想の実現に向けて、健康・食・運転を中心に様々な領域で取り組みを進めてきた。例えば健康領域では、サービスステーションを拠点とした予防医療の普及を目的に、移動式脳健診サービスの実証実験などを行なってきた。
エクサウィザーズとの共同推進によって、取り組みをどのように発展させていくのだろうか。
三枝氏は「スマートよろずや構想の事業戦略策定から実行、スマートよろずやの複数サービス領域横断のデータ活用設計や実装、サービスへのAI活用などを協働で進めていくことを計画しています」 と語る。
こうした幅広いソリューションを提供することに関して、大植は「経営課題を解決し、成果を獲得するために、私たちが持つアセットを活用し、“できることは全てやる”というスタンスでお客様と対話を重ねています」と言う。
三枝氏も「目的意識を共有した上で、成果獲得までのフロー全体に伴走していただけるパートナーであり、とても心強いです」と評価する。
村井氏は、人材育成の面からもエクサウィザーズの支援を評価する。「一般的には、新規事業を作る際、専門人材を外部から採用するケースが多いと思います。ですが、社員を家族として大切にする文化のある出光興産では、今いる社員に新しいスキルの獲得機会を提供して、新しい役割を担ってほしいという想いがあります。多様なスキルを持つエクサウィザーズさんと共にプロジェクトを進めることで、私たちの社員にもDXを実現するために必要なスキルや考え方が醸成され始めていると感じています」と話す。
業態変革に向け、全社員のDX人材化を目指す
業態変革に取り組む同社では、イノベーションを生み出すための人材育成にも力を入れている。三枝氏は「これまで、DXリテラシーと起業家マインドを備えた人材を育成するための『塾』という教育プログラムの提供などを行ってきました」と話す。
DXスキルの習得に関しては次のように位置付けているという。「これからDXのスキルは、ビジネスをする上での“読み書きそろばん”にあたるひとつとしての位置付けになっていくと考えています。特に、業態変革に取り組む我々は、2025年までに、現場が変革を主導することのできる『DXネイティブカンパニー』へと進化することを目指しています。そういった意味でも、DXは社員全員に必要なスキルだと考えています」
社員全員のDX人材育成に向けては、エクサウィザーズが提供するDX人材発掘・育成サービス「exaBase DXアセスメント&ラーニング」を利用する。これは、DXの実践に必要なスキルや素養を定量的に可視化し、個人や組織ごとの到達度合いを評価する「アセスメント」と、DXスキルやマインド、リテラシーをe-ラーニングを用いて醸成するための「学習コンテンツ」をあわせ持つサービスである。
三枝氏は、exaBase DXアセスメント&ラーニングについて「私自身も実際に利用をしてみたのですが、アセスメントによって、個人や組織のDXスキルを客観的に評価できることにメリットを感じています。この結果を人材発掘や育成対象の選抜、育成施策の方針検討、効果検証などに活用していきたいと考えています。学習コンテンツに関しても、アセスメント結果をもとに個人に最適なコンテンツがレコメンドされる点も魅力的だと思っています」と評価する。
石油ビジネスからデータ活用ビジネスへの変革をエクサウィザーズと共に推進
「Data is The New Oil(データは次世代の石油)」と言われる時代の中で、まさに石油ビジネスからデータを活用したビジネスへの業態変革をなんとしても成功させたいと考えています」
三枝氏はこのように話したうえで、今後の展望を語る。
「これまでは部分的なデータ収集や活用に留まっていましたが、データ活用基盤が整いつつあるこれからは、いよいよ本格的にデータをビジネス成長に活用していくフェーズです。ぜひエクサウィザーズさんの持つ知見やノウハウを教えてもらいながら、共に成果を出していきたいと考えています」
こうして、共に社会課題解決を志す出光興産とエクサウィザーズの業務提携は、両社の強みを活かしたイノベーション創出に向けた大きな一歩を踏み出した。出光興産が目指す企業変革の実現に向けて、両社はさらに連携を強化していく。
Member
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大植 択真株式会社エクサウィザーズ
取締役 -
小松 直人株式会社エクサウィザーズ
AIプラットフォーム事業部