各社員のDXスキルを把握し、学習をパーソナライズ
アイデア創出プログラムでは5つが実現に向けて進行中
阪急阪神不動産株式会社
グループの中核をなす事業企業として、阪急電鉄株式会社や阪神電気鉄道株式会社など、関西を代表する鉄道会社が名を連ねる阪急阪神ホールディングス。その不動産事業を担う阪急阪神不動産が展開するマンションブランド<ジオ>は、関西のみならず、首都圏、東海圏にも進出。分譲マンション、分譲戸建の提供のほか、商業施設の運営など幅広い事業を手掛ける。近年では、ASEAN地域中心に海外不動産事業も加速させている。
概要
overview
新しいデジタル技術が急速に普及する中、持続的な企業価値の向上に向けては、DXを始めとする変革が急務だと考えた阪急阪神不動産。2022年4月にDX推進部を立ち上げ、DXの取り組みを本格化させる。変革の意識を全社的に広げるべく、まず取り組んだのが、全社員を対象としたDX人材育成だ。
課題
・DX人材育成を始めるにあたり、まずは社員のDXスキルの現在位置を把握したかった
・全社員の「ビジネスデジタル人材」化を目指し、DXリテラシーやマインドを醸成できる学習コンテンツを求めていた
・部門ごとに選抜した社員に対して、より高度なDXスキルを身につけてもらうための研修を計画していたが、IT関連部門以外では誰を選抜対象とすべきか悩んでいた
解決
・全社員約1000人に「exaBase DXアセスメント&ラーニング」のアセスメントを受検してもらい、現在位置の把握やDX人材の発掘ができた
・アセスメントにより、DX素養の高いポテンシャル人材も発掘でき、選抜研修の受講者をデータに基づいて決めることができた
・「Udemy Business」と「exaBase DXアセスメント&ラーニング」を連携させ、アセスメントの結果をもとに個人ごとに最適な学習コースをレコメンド。効率的なスキル習得ができている
・DXのアイデアを創出する実践型プログラム「ビジネスアイディア・創出プログラム」では、5つのアイデアが実現に向けて動き出した
・DX人材育成と並行して、経営幹部に対する「DX研修」も実施。DXの重要性や方向性を共通認識化した
事例の紹介
阪急阪神不動産は、2022年4月に既存のIT組織から独立した新組織「DX推進部」を新たに創設し、全社を挙げたデジタル変革への歩みを本格化させた。今回、その変革の意識を全社的に広げるべく、まず取り組んだのがDX人材育成だ。
エクサウィザーズが提供する、経済産業省策定の「デジタルスキル標準」を網羅・準拠したDX人材発掘・育成サービス「exaBase DXアセスメント&ラーニング」を全社員に導入。DXの実践に必要なスキルや素養を計測・スコア化できる「アセスメント」で、部門や個人ごとのDXスキルや素養を見える化。eラーニングコンテンツで、全社員のDXリテラシーを底上げした。
さらに、全社横断的なDXを推進するための専門性の高い人材「ビジネスデジタル人材」を育成するために、エクサウィザーズが提供する「ビジネスアイディア・創出プログラム」や「データ分析演習」など実践的な育成プログラムも積極的に展開している。
本記事では、DX人材育成に取り組む前の課題や「exaBase DXアセスメント&ラーニング」導入の決め手、効果、今後の展望などについて、DX推進部兼人事部 課長の向原 孝樹氏とDX推進部 課長 清家 邦晴氏に伺った。
DX人材育成をスタートするには、現在位置の把握が必要だった
2022年4月のDX推進部立ち上げと同時にDX人材育成をスタートさせた同社。特に重要視したのは「ビジネスデジタル人材」の育成だ。ビジネスデジタル人材は、ビジネス部門の業務知識を有し、コアデジタル人材(アプリ開発・サーバー構築などの経験があり、高度な専門性を有する人材)と連携しながら、全社横断的にデジタル化を推進できる人材を指す
出典:阪急阪神不動産株式会社
こうした人材の育成をするにあたり、まず課題となったのは、社員が現状どの程度のDXスキルを持っているか把握できていないことだった。DX推進部兼人事部 課長の向原 孝樹氏は「現状を可視化しないことには、誰にどういった教育をするべきか正しい判断ができないと思い、まずは社内の現状を明らかにしたいと考えました」と話す。
そこで、同社が導入を決めたのが、エクサウィザーズの提供するDX人材発掘・育成サービス「exaBase DXアセスメント&ラーニング」だ。
導入を決めた理由を、向原氏は「やはり何と言っても、ラーニングコンテンツだけでなく、アセスメントまで提供されていることに魅力を感じました。回答者のレベルに応じて出題される問題が自動的に変化する点も良いと思います。適切な難易度の問題で回答者のスキルを把握することができるので、評価の精度が上がります。過度に簡単または困難な問題に時間を無駄にすることもないので、回答者にとっても評価者にとっても効率的な仕組みだと思っています」と教えてくれた。
約1000人の社員がアセスメントを受検。意外なDX人材やポテンシャル人材を発掘
こうして「exaBase DXアセスメント&ラーニング」を導入し、全社員約1000人がアセスメントを受検した。
全社員に受検してもらったメリットを、DX推進部 課長 清家 邦晴氏は次のように語る。「思わぬ部署にDXスキルを持った人がいることや、意外な人がDXの素養を持っていることが分かりました。選抜研修に参加してもらう人を決める際にも、意欲はもちろんのこと、定量的に判断できるというのはデジタル的な発想としても良いと感じます」と清家氏は評価する。
また、他社も含めて、これまでアセスメントを受検した全受検者の結果との比較や業界内での比較など、相対的にレベルが分かることも評価する。「全業界の中で比較すると、不動産業界自体が、デジタルリテラシーはそれほど高くないことも分かりました。逆にいうと、先手を打てば、チャンスが広がるかもしれないということ。それが客観的に知れたのは面白かったです」(清家氏)
個人ごとに最適な学習コンテンツをレコメンド。効率的にDXスキルを習得
「exaBase DXアセスメント&ラーニング」のラーニングコンテンツも全社員に展開している。向原氏は「デジタルに詳しくなかった人からも、DXの重要性や全体像を理解できたという声をもらっています。苦手意識も減ったと思うので、DXに関わる用語なども、社内共通で使っていけるという点でも効果があったと考えています」
また、同社ではDX推進部のメンバーを中心にオンライン学習サービス「Udemy Business」と「exaBase DXアセスメント&ラーニング」を連携して利用している。「Udemyと連携することで、アセスメントの結果をもとに、個人毎にパーソナライズされた学習コースをレコメンドすることができるため、効率的なスキル習得ができています」(向原氏)
「ビジネスアイディア・創出プログラム」や「データ分析演習」で実践力を強化。実際のDXプロジェクトにも発展
また、DX推進部のメンバーを中心に、エクサウィザーズが提供する「ビジネスアイディア・創出プログラム」も実施した。これは、エクサウィザーズの講師がメンターとして伴走支援をしながら、チームで課題を設定して、施策に落とし込む3日間のワークショップだ。
「DXの事業を企画するとなると、とっつきづらい印象がありましたが、課題は何で、顧客体験はどのようなもので、投資効果をどう判断するかという流れは、普段のビジネスの手法とあまり変わらないと知れたことは収穫の1つでした。反対に、投資効果判断や技術活用の方法や考え方など、普段のビジネスとは異なる点を知れたことも大きかったです」と向原氏。
ワークショップの最終日には、5チームがそれぞれ事業課題をまとめ、DXを管轄する役員に向けてプレゼンを行なった。出てきたアイデアは、人事データを離職防止にどう活用するか、マンション管理業務をいかに効率化するかなど、まさに普段の現場で感じていた課題だった。
「プレゼンに対して、役員から非常に鋭い指摘をされたのにはびっくりしました。単なる研修としてではなく、本当の事業企画として受け取ってくれたのです。現在、実際にプロジェクトが進行していまして、非常に効果的な研修だったと感じています」(向原氏)
2023年度からは、「データ分析演習」もスタートさせる。向原氏は「エクサウィザーズさんの提供する『データ分析演習』を通して、業務の生産性や顧客体験の向上を目的としたデジタル化には欠かせない、データへの理解を促していこうと考えています。対象者は、各部のデータ管理を所管する管理職を指名するのに加え、受講希望者を公募し、選抜します」と教えてくれた。
経営幹部に対する「DX研修」も実施。DXの重要性や方向性を共通認識化
DX人材育成と並行して、経営幹部に対するDXの理解を促すための「DX研修」も行った。「DXを進める上では、まず経営層がDXの重要性を理解した上で協力してくれる体制を築くことが重要だと考えました。講師を務めていただいたエクサウィザーズ 取締役の大植さんには、我々のDXの捉え方を十分に理解してもらった上で話をしてもらえたので、非常に有意義な研修でした。これまでにエクサウィザーズさんが経験してきた実例も多く紹介いただき、かなり理解が深まったと思います」(向原氏)
「たくさんの質問が出た中で、アフターセッションでもフォローしてもらい、事後のアンケートでは受講した役員陣の95%が『大変勉強になった』と答えてくれました。中には『DXに真剣に取り組まないと生き残れないと危機感を感じた』という感想もあり、DXの重要性や方向性を共通認識にできたと感じています」(清家氏)
コミュニティで積極的に情報交換
DXに関するセミナーや相談イベントへの参加や最新情報の収集ができる「exaBase コミュニティ」についても評価する。
清家氏は、「今後、DXをさらに推進していく中で、他社とのコラボレーションも多くなってくると思います。業界を越えた協業が重要になってくるでしょう。そうしたつながりのきっかけを作ってくれる場があるのは、すごく助かっています。今後、グループ内でDXを展開する際も、コミュニティ作りのヒントになっていると感じています」と教えてくれた。
向原氏も、このコミュニティについて「同じようにDXに奮闘している社外の仲間と意見交換できることは、心の支えにもなりますね。大阪での開催時は皆勤賞を狙っています。本当は東京も全部行きたいですけどね(笑)」と話す。
エクサウィザーズとともに、DXを進化させていく
このように、同社ではエクサウィザーズが提供するDX人材育成プログラムなどを存分に活用いただいている。全体を通して、エクサウィザーズのサービスをどのように評価しているのだろうか。
「エクサウィザーズさんは、実際にAIを活用したDX事例を数多く手掛けているだけあって、コンテンツが実践的で、さまざまな知見をお持ちだと感じます。また、我々のDX推進の現状を深く理解してくれた上で、パッケージにとどまらないソリューションの提案をいただけるのは、非常にありがたいです」(向原氏)
最後に、清家氏はエクサウィザーズに期待することを次のように語ってくれた。「データの蓄積を進めていき、お客様に対してデータを活用した新しいサービスの提供を検討できるフェーズになったら、そこもエクサウィザーズさんの得意分野だと思うので、ぜひ力を借りたいです。今後も事業パートナーとして、引き続きよろしくお願いします」